ママを歌うお年頃




解体する遺体はどれも見知らぬ人間ばかりなのは友達のいない私としては当然のことだ。けれど今日解体した遺体は少し違う。私の住むアパートのすぐ近くに暮らしていた老人が、今回運ばれてきた遺体だった。どんな理由で殺されたのかは知らないし、知ってもいけない。

理不尽な死は近くにある。横たわる遺体に、いつどんな理由でやって来るか分からない恐怖を改めて突き付けられた気がした。こんな姿になったら誰が看取ってくれるんだろう。人嫌いは孤独に死ななくてはいけないなんてルールはないのだから、せめて死んだ私の瞼をそっと閉じてくれるくらいの人は死に際にいてもらいたい。

老人の髪をとかし瞼を下ろして冷凍を始めた。特別サービス。


つぎ