鉄の中で上を見上げるお年頃




ただいま宝石を洗浄中。

今日の仕事で運ばれた男の状態がそれはもう見るも無惨なものだった。そんなときは手作業でこまい処置を施していくのだから私の腕の見せ所である。そんな最中、死後何の変化もない男の右目に見えた違和感。本物の眼球ではない、義眼がそこにすっぽり収まっていた。

取り出してみると義眼から、カラカラと何かが転がる音がして好奇心をそそられた。ハンマーを振りかざし割って出てきたものは紫に輝くアメジスト。荒い断口だがそんなことは気にならない。電灯の光でさえ美しく見えてしまうのだから。仏様にはもう必要のないものだろう、代わりにガラスの球で作った上等な義眼を嵌め込んでから解体してあげよう。滅多にしない私からささやかな供養。


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