メトロセクシャルなお年頃
「ななこってどこからきたの」
イルミさんはそのまま話を続けるつもりだ。さっき彼がこぼしたキルというのは誰のことなのか少し気になるが彼のプライベートに立ち入ってはいけないことを忘れたわけじゃない。それにしてもこの質問を投げかけた意図については十分に議論の価値がある。
「どこって…。別にどこでもいいし、イルミさんなら事前に調べてあるんでしょう」
「うん、そうなんだけど俺が聞きたいのはそういうことじゃないんだよね」
そろそろ私は寝たいのだけど。小さく唸るイルミさんに眠そうな素振りはない。暗殺家業の睡眠時間はいくつなんだろう。
「まぁいいや。ななこ頭悪そうだし、もう寝なよ」
「言われなくても寝る。そのままで良いですけど何もしないでくださいよ」
「しないけどさ」
ぐっとイルミさんの顔が上にくる。
「キスぐらいはさせてもらおうかな」
思いがけない発言に力を込めた拳を一発、ダメージなんて与えられなくていい、自分の気が済めばそれでいい、イルミさんに放とうとしたがぐらりと視界が歪んだ。
「ななこは寝てていいから」
あの針だ。そうに違いない。おやすみ今日よ。