振り返る気配に惑うお年頃
「この家、窓がないね」
ちゃっかりベッドに潜っているイルミさんを端に押しのけて自分も眠る。窓がないことに深い意味はない。何となく、部屋を自分の好きに彩り改装していったら窓のない部屋に落ち着いただけ。赤を基調としてショッキングピンクや真っ青な差し色が部屋の中で跳ねる。
「窓がないと落ち着かない人ですか?」
「そんな風に見えるかい」
見えるわけがない。イルミさんには背を向けて毛布を余分に取り口元まで毛布を覆ってしまい早く眠れるようにと目をつぶった。そのはずなのに、突然自分の心が踏みしだかれるイメージが頭を過ぎって顔をあげた。
「その手は何」
「触ろうとしている手」
「食べる気ですか」
「人を食べる趣味とかないんだけど」
「そういう意味じゃないんですけど」