交差点を抜けて、薄暗い喫茶店やコンビニが立ち並ぶ通りに出ても人の波が途絶えることはなく、細いゴミしかないような通りにまで必ず人がいた。

「静雄君」

床屋の角を曲がった路地で煙草をふかし、静雄は一人でツンと立っていた。声をかけた私に気が付くと軽く相槌をうち、サングラスを直した。

「のだめか、どうした。何してんだよ」

「ちょっと野暮用」

「あの糞もいるのか?」

「知らない」

シーソーのように静雄の煙草は口元で揺れている。時々私をじっと睨みながらも、どこか遠い所を見て言った。

「なら良いか」

癖のない子供みたいな笑い方が心地よかった。組まれた肩が予想以上に重くて鞭打ちになるんじゃないかと思ったけど、何とか堪えた。何も言わずに私は静雄の手を叩いた。