言い訳を考える余裕もなしに電話に出た。念の為にベランダに出ていく。口の中はカラカラと音を立てて泣いていた。
もしもし。のだめ、今どこ?どこって、友達の家だよ。だよねえ、家にいないもん。
「えっ、今あたしの家?」
「そうだよ。今日約束したじゃない。買い物に行こうって」
こういう時ばかり私との約束を守らなくても良いと思った。寒いベランダに縮こまって形だけは懺悔のポーズ。B作は自分のベッドに突っ伏して後悔のポーズ。
「珍しいね、約束を忘れる君って」
約束を守る臨也の方が珍しいと思うよ。
「本当に友達の家?」
「そうだよ」
「嘘だ」
「なんでよ」
「分かるよ。その焦った返事の仕方。本当のだめって単純で馬鹿だよね」
「………」
「なに、どうしたの。泣いてるの?泣かれた所で悪いののだめだからさ、困る迷惑」
流しから無駄に排水される水の勢いと、これは一緒だ。とめどなく出てきて、しまいには神経が切れる。
「あっそ」
それだけ言って私は静かに電源ボタンを押した。