今日見た夢を紹介しようと思う。私と臨也が付き合い始めて適度な時間が経ったある日に、夢はクローズアップしていった。

「出かけるの?」

「仕事だから。大人しく留守しててね」

わざわざ家に呼ばれてこれは最初から確信犯だったに違いない。閉じられた空しいドアを見届けて部屋を見回した。目新しいものなんてもう何もなく、間もなく退屈が押し寄せる。私はテレビをつけて少しでも時間の流れを進ませようとした。

夕方のニュースが知らせる時刻を見て、私は臨也の言いつけを破り外に出る支度をした。携帯をポケットに入れ鞄を引ったくる。新宿は出よう、未だによく分かってない池袋の地形を覚えに行く為だと勝手に自分の中で理由をつけた。

山手線にさえ乗れば新宿から池袋まで早くて楽だ、そう最初は思っていたが、これは大きな勘違いだった。最初に来た頃からずいぶん日が経っているせいか改札を出てからの道が全く分からない。周囲には私と同じ様子の人は勿論いなくて焦る。立ち止まろうとしても人の流れがそうはさせてくれず、無理に歩くしかなくて私は案内看板にちらりと視線をやりながら前に進んだ。

所々にエスカレーターや通路がある。人の流れにまかせて細い通路やエスカレーターを上がればやっと地上が。大きなふくろうの銅像をすぎて見えた外は前と変わらず人で溢れかえっていた。

ほっとため息を吐く。流れ出た息と一緒に私のやる気もどこかに消えてしまったらしくて急に視界が狭くなった。とりあえず待ち合わせを目的に人が立っている所に自分もお邪魔させてもらうことにしよう。座り込み低い目線で見る池袋は、汚くて見れたもんじゃない。無意味に携帯を取り出して、きっと私だけ目的もなくいじる。

私に近付く、不自然な足の動きに眼が止まった。

「あ、ヘイワジマ、シズオさんだ」

見上げた先には金髪とバーテンの服を着たサングラスの男。言わずとしれた有名人、ヘイワジマシズオ。

「俺のこと知ってんのか?」

「知らない人なんているかな」

「さあな」

退屈からの転調に腹の底辺りが疼き出す。


つぎ