「家、どこだ」
「え?」
「だから、家。どこなんだよ」
「家に帰してくれるんですか?」
「帰してほしくないのか?」
「か、帰してください!」
困っていた表情はすぐに強気なものに変わり、俺の先を歩く。
「あの、ちょっと」
「どうした」
「手…」
ずっと繋ぎっぱなしだった手。根岸は軽く引っ張る仕草を繰り返している。離してほしいらしい。
「引っ張ってけ」
「はぁ?」
「頭回んねえんだよ。この方が楽だろ?」
眉間に深く皺を刻んで、根岸は前を向いた。どうやら諦めたようだ。最初の一歩を踏み出し、俺達の帰路はやっと始まった。