「腹痛えっす、ベッド貸してくだせえ」

昼休みが終わると共に、こういう適当な理由を付けて保健室にやってくるクソガキが腐るほどいる。特に、この沖田はかなりの常習と言っていいだろう。

「おい、仮病が寝るな」

「高杉先生、どうせ保健室のベッドなんか誰も使ってねえでさあ」

「今、お前の目の前で腹痛に苦しむ山崎は見えねえのか?」

換気のため、開けっ放しの窓から吹き付ける風に揺れるカーテンを眺めながら沖田は一人ごちていた。あいつまさか俺が好きなのか、奴の頭から漏れっぱなしの自惚れが俺の耳に入りこむ。銀八が噂していた沖田の恋煩いがこっちにまでやってきやがった。

「そんなベタはねえだろうよ沖田」

「いや、わかりやせんぜ。最近の女子ってのは奥手に出来てまさあ」

「じゃあ、かけてみろよ」

「何を」

「カマだよ、カマ」

黙る沖田をしり目に俺は携帯を取り出した。晴れやかな午後。



まえ