昼休み職員室に寄った帰り理科室の前を通る。暗い廊下、男女の声が聞こえてふと立ち止まる。女の方は嬌声に近い声で、学校で盛るなよ、と思いつつ興味本位でドアから中の様子を見る。金髪がキラキラと揺れていてハッとする。この学校で金髪の女なんて1人しかいない。…来島だ。

「お前は声でけェんだよ。」
ドアに近づいたせいでハッキリと聞こえてきた男の声は嫌でも毎日聞く声だった。間違いなく高杉の声だ。目眩を覚えて慌ててその場を離れた。

ぼんやりとした中で時間はとても早く過ぎたらしく、午後の授業はよく分からない内に終わっていた。放課後、何人かに声を掛けられた気がしたが内容まで耳に入ってこなかった。自分の足は真っ直ぐある場所に向かっていた。

昼と同じく暗い廊下。理科室の前で立ち止まって深呼吸をする。ガラッとドアを開けるとカビ臭い匂いが鼻を掠める。もうここは物好きな年寄りの理科教師しか使っていないので空き教室同様ボロくなっている。盛るには絶好の場所だと、昼休みの出来事を思い出しいたたまれなくなる。不快な空気が充満している気がして窓を開け空気を入れ替える。なんとなく席に座ると目の端に赤いものが映る。チラリと見やれば女子制服に付いてる赤いリボンだった。場所的に来島の忘れ物だと気付き、机に突っ伏する。

ガラッという音がし、顔を上げると1番会いたくない奴がドアのところで立っていた。

「よォ、銀時。何してんだ?」
「別に。」
そう答えて目を逸らすと、高杉は歩みを進めて俺の座ってる斜め向かいの机に腰掛ける。
「テメェ昼の見てただろ?」
「…気付いてたのかよ。理科室だけにおしべとめしべがこんにちはってか、ふざけんな。常識的に考えておかしいだろ。学校で盛るとか下品過ぎて虫酸が走るわ。」
くだらない冗談と乾いた笑いしか出なかった。ここまで喋り過ぎたことにも気付き、口を噤む。
「今更じゃねェか。言いたいのはそういうことじゃねェんだろ?」
口の端を上げてそう言った奴を見て、無性に腹立たしくなり
「どうでもいい。」と呟いた。

高杉は立ち上がり赤いリボンを拾い上げてポケットに突っ込むと、理科室を去ろうとしていた。ドアのところで立ち止まり振り返り様言った言葉を俺は帰り道何度も反逆した。

「本当にどうでもいいと思ってんのか?」

その言葉は一日中ぐるぐると頭の中で回り、結局眠ることが出来ず寝不足で学校に行く。教室にはもう来島が居た。昨日と同様金髪はキラキラ揺れる。嫌でも昨日のことを思い出させる。ただ一日が早く終わることを願った。昼頃高杉が遅刻して登校してきた。

楽で好きだった最後列の席を初めて恨んだ。目の前で行われる来島と高杉のアイコンタクト。誰も知らない秘密のアイコンタクト。俺しか見ていない。高杉は来島に向かって見せたのとは違う笑みでこちらを見る。気にしていないフリをする。ポーカーフェイスの仮面の裏ではやっぱり『どうでもいい』と思えない。

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