※ぬるいR-18表現有り。



別にいいっスよ。私達はこれからもずっと同じ。鬼兵隊の一員なんスよ。

彼女は割り切ったように、分かりきったように、そう言った。それはまるで背伸びして大人になったつもりで言った台詞のようで滑稽だと思った。嘲笑ってやれたら良かったのに結局あの男には敵わないんだと打ちのめされた気分で上手く笑えなかった。こんな時目の奥が隠せて本当に良かったと思う。

部屋で独り先程の過ちを思い出す。来島がちょうど晋助を探していたところに出くわした。艦内を隈なく探しても何処にもいない、と不安そうに居場所を尋ねてきたので分からない、と答えるとより一層不安げな顔をした。それが何だかおかしくてそういえば、と付け足して話を続けた。本当は晋助は会議で今日一日戻らないと知っていたが、もうすぐ帰ってきてまずここに来るだろう、と嘘をついた。ここで待てばいい、と言えば来島は疑うことなく礼を言って部屋にあがった。信頼されているのは嬉しいが異性として見られていないようで複雑だなんて柄にもないことを思った。部屋に二人きりになってから沈黙が怖いのか来島は饒舌だった。思い返してみれば二人きりで部屋にいることなんてなかったかもしれない。何処となくいつもと雰囲気の違う、少し気まずい距離感を感じてこちらも落ち着かないが来島の話に耳を傾ける。

万斉先輩って晋助様と仲良いっスよね。
その一言だけやけに鮮明に聞こえた気がした。というよりはその一言がひっかかってぱん、と何かが心の中で弾けた気がした。羨ましいなんて口走るその口を手で塞ぐ。自分がどれだけあの男を羨んでいるのか、妬んでいるのか、疎ましく思っているのか、言い聞かせてやりたかった。結局来島にとって自分は晋助の付属品なのだ、と改めて突き付けられたこの現実は万斉にとって酷く忌々しいもので陰鬱な気分にさせた。自分がどれだけ彼女のことを想っても想いは届かないし、彼女の瞳には晋助以外映り込まないのだ。そう思ったら来島の全てが忌々しく思えて、愛情が憎悪に変わるとはこういうことなのか、と万斉は何処か冷静に理解した。冷静なつもりでいても理性はなくなっていたようで彼女を押し倒した記憶が最後。そこからは曖昧なままだ。

抵抗する来島を何度も殴って鼻から血を流す彼女を見下ろしながら何処か優越感を感じて自身を挿入した。来島は最後まで泣くでもなく、大声であげるでもなく、ただその碧色の瞳で自分を捉えていた。その瞳を真っ直ぐ見つめることが出来なかったから自分がどんな顔をしてたかは分からない。でもきっとその瞳に自分は映っていなかっただろう。その瞳は焼き尽くすような憎しみも、ガラス玉のように割れそうな悲しみもなかっただろう。ただ無感動に空虚を映していただろう。部屋から出て行く最後まで恨み言も言わず、泣きもせず、割り切ったようにあの一言だけ告げて来島は去って行ったのだ。

翌日、来島は何もなかったように普段通り過ごしていた。いっそのこと晋助に泣きついてここを去るよう仕向けてくれれば良かったのに、なんて都合の良いことを考える。そんな簡単に楽にはなれない、逃げ場など無い。来島が晋助を守るように傍に居続けて何度も晋助様と呼ぶ様をこれから一生見続けなければいけない。晋助の為に命を落とすその日まで。それが来島からの罰であるのだ。見ていれば痛い程分かる彼女の血も涙も全て、晋助への愛の味だという事実。血を送る心臓もあの瞳も全て晋助のものなのだろう。彼女の世界には晋助しか居ない。そして来島は明日も明後日も、命果てるまで、いつも通りに晋助を愛するのだ。

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