必然としての邂逅だろう。これは運命というか宿命だろう。少し前の自分に教えてやりたい。その女だけはやめておけと。そもそも俺自身ここまでこの女に入れ込むとは思わなかった。ほんの少しだけその金色の髪が光を反射してキラキラなびいて綺麗だと思った。それだけだったのだがそれが蔦を絡めて今や俺の大切なもの全てを縛る。

最初からこうするつもりで近付いたのだとしたらとんだ演技派だ。ほんの少しだけだったが一緒に過ごした日々は茶番だって言うのか。
「知ってたのかィ?」
「今日初めて知ったっス。」
思わず零れた一言を来島はきっかり拾ったようでそう返事する。多分嘘じゃない。本当に今日の今日まで知らなかったのだろう。俺と同じように。ならば随分切り替えの早い女だ。立派なもんだと思う。もしかしたらそもそも想っていたのは俺の方だけだったのかもしれない。全部全部勘違いだったのかもしれない。
「晋助様を守らなきゃいけないんス。晋助様の為にこの命を差し出すって決めてるから。」
こいつの忠誠心は見上げたものだな。というより鬼兵隊総督の高杉晋助が本当のこいつの想い人だろう。俺は足元にも及んでいなかった。今目の前に居るのは俺が知ってる来島また子ではなくて鬼兵隊の来島また子で全くの別人なのだ。

「総悟、」
今まで見せたきたように穏やかに笑いかけて俺の名を呼ぶ。けれどもうこいつのことは知らない。何も知らない。両手に握られる2丁の拳銃の銃口はどちらも俺に向けられている。この女は非情だと、自分の大将しか見えていないのだと、その綺麗な金糸は永遠に俺のものにはなり得ないと、誰か教えてくれたら良かったのに。ある意味自業自得なのだけれど誰かの所為にしなきゃやってられない。来島は一度銃を下ろして俺に近付く。一歩ずつゆっくりと。そして俺の前に立つ。
「本当に好きだった。」
そう言って来島は俺にキスをする。何度もしたけれど全く別の、嘆きだけが伝わるキスだった。

さっきまでの距離じゃ俺が間合いに入る前に撃たれて終いだったろう。今この距離じゃどうなるか分からない。俺が斬るが早いか、来島が打つが早いか。相討ちならいいな、と少しだけ思う。我ながら情けない。早くに気付いてさっさと捕まえてりゃ大手柄で副長になれたかもしれなかったのになんて思ってないことで悔しがってみたりする。ちゃんとやり合ってやらなきゃなぁ、と刀に手を掛ける。やるせない、やりきれない。震える手にぐっと力を入れて刀を抜く。これが俺と来島の最後の日だった。
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