幸せな二人
「じゃあ悪いけど、夕方頃には帰って来るからそれまで家の事と兄貴の事をよろしくな、姉貴」
「無理はしちゃダメっスよー」
『大丈夫よ、二人とも気をつけて行ってきてね』
朝から滋賀の用心棒として仕事を頼まれた空丸と宙太郎を見送った後、天華はまだ部屋で寝ているであろう天火を起こしに家へと戻って行った
「天華〜、空丸と宙太郎はもう行ったのかぁ?ふわぁ…」
『天火?今日はいつもより起きるの早いのね』
襖を開けると寝起きの天火が玄関前に立っていた
なんでも空丸達の見送りをしようと起きて来たみたいだが時既に遅し…
先程二人は仕事に行ってしまったのだから
『もうちょっと起きるの早ければ見送り出来たんだけど』
「まぁ、過ぎた事を云ってもしょうがねぇ。あいつらが帰って来たら見送り出来なかった分も含めて思いっきり構ってやる」
それはそれで空丸が嫌がりそうと思った天華だったが、敢えて口には出さず笑っていた
そんな天華を見て天火はおもむろに顔を近づけると一一一
ちゅっ
『っ…』
「ん…おはよ、天華」
唇に柔らかい感触がしたかと思うと、目の前には優しく笑う天火の顔
ここでようやく天火にキスされたことに気づいた天華は顔を真っ赤に染め上げる
『て、天火っ…』
「そんなに真っ赤になっちゃって、天華は本当に可愛いなー。おはようのちゅーでこれじゃあこの先お前大変だぞ?」
楽しそうに笑う天火に仕返しとばかりに今度は天華がずいっと顔を近づけ、
そして一一一
ちゅっ
「っ!?」
『ん…、おはようっ…て、天火…』
天華は天火に口づけると、羞恥心からなのか先程よりも顔を真っ赤にしながら天火の胸に顔をうずめた
「お前っ…、可愛すぎだろ!」
そして天火もまさかの天華の嬉しい不意打ちに顔を赤く染めあげ、そのまま彼女をぎゅっと抱きしめた
朝からなんとも仲の良い二人である
「あー、俺は幸せ者だなぁ…こんな可愛い嫁さん貰えるなんて」
『わたしも、天火と一緒になれるなんて思わなかった。だからね、今すごく幸せなの。叶う筈ないって思ってた想いが実って、本当の意味で曇家の…天火達の家族になれたから一一一ありがとう、天火』
わたしを愛してくれて
家族にしてくれて
『愛してる』
「全部俺の台詞だ。愛してる天華、ずっと俺の傍にいてくれ」
天火の言葉に天華は嬉しそうに頷くと、そっと天火の背に腕を回し抱き返す
それに気づいた天火も先程より強く天華を抱きしめた
『何かわたし、天火に甘えてばかりね。気が緩んでるのかな?』
「お前はむしろもっと俺に甘えるべきだ。今まで何もしてやれなかったし、辛い想いをさせてきた。だからその分、今度は俺がお前を幸せにするし何でもしてやる」
俺達は夫婦なんだから、前みたいに気ぃ使うなよ?
そう云って笑う天火は贔屓目なしにかっこいいと思った天華はまたもや顔を赤くする
そんな幸せそうな二人の様子を、ゲロ吉だけが静かに見守っていた
おまけ
「何か手伝うことあるか?」
『大丈夫、天火はゆっくりしてて?家事は妻の役目だし』
「でもよぉ、それじゃ夫の俺の立場なくね?」
『そんなことないよ。わたしは天火が傍に居てくれればそれだけでいいんだから』
「……俺、お前には一生勝てない気がする」
可愛すぎるのも罪だな
end
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