3-2
『政府直属?』
「そんな人がどうして!?」
「今曇神社に危険人物が向かってるんですよ!」
そうだ、こうしている場合じゃないっ
早く神社に戻らないと!
「そちらは把握している、今頃警官が駆けつけているだろう」
武田はそう云うと天華と天火の前まで足を進め、ゆっくりと刀を抜いた
「貴方達と手合せを願いたい」
「むり」
『お断りするわ』
そう云って天華と天火は一目散に走りだした
「知らん奴に構ってる時間はねぇ!俺達は忙しいんだ!!」
二人は走りながら道を邪魔する陸軍を倒していく
その後を追う武田とその部下たち
「逃げるのか負け犬!」
「どうとでも云え!俺が良ければすべて良しっ」
武田の挑発にも全くのらない天火達はそのまま走る速度を上げていく
「そうやって、過去からも逃げるのか!?」
武田からそう云われるまでは一一
『天火、わたしは先に神社に戻るからあの武田くんって人の事頼んでもいい?』
「ああ、無理はするなよ。俺もすぐに行く」
そう云ってお互いに微笑むと天火はその場に残り、天華は神社へと駆けて行った
空丸、宙太郎……
無事でいてよっ…
「俺は全部知っている。今は神社の当主だろうが弟達は知っているのか、オロチの一一一」
それは一瞬の事だった
武田が持っていた刀は折れ、自分の左肩には扇子の先が押し当てられていた
「お前、よっぽどマゾらしいな」
(あの扇子、鋼鉄[はがね]か…)
即座にもう一本の刀に手を伸ばすがその手は天火に弾かれ、右脇腹に思い切り拳が叩き込まれる
「〜〜〜〜っ…」
武田は拳の重みに耐えられずその場で前屈みに崩れ落ちた
重い…っ
一発でこれかよ
立ち上がることの出来ない武田の前に天火がしゃがみこむ
「気は済んだか」
いつもの明るい声とは対照的な低い声
「軍だか部隊だか知らねぇが、この曇天の下の治安を任されているのは曇家だ」
そして真剣な顔つきに他を寄せ付けない重いオーラ
「逆らうな、俺が掟だ」
これが彼、曇天火のもう一つの顔である
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