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曇神社に続く長い石の階段
その階段を天華を先頭に天火、宙太郎という順にのぼっていく
天火に背負われている空丸は、前にいる天華の背を見続けていた
天火よりも華奢で小さいはずのその背中が
今は誰よりも大きく見える
基本天華は争いごとが嫌いな為、今回のような罪人捕獲はほとんど天火が行っており、自ら赴くことはほとんどない
稽古にしてもそうだ
いつも自分達を縁側から見守るだけで、天華本人は空丸や宙太郎に稽古をつけた事は一度もない
だが、まだ空丸が幼い頃、一度だけ天火と稽古をしている天華を見た事がある
あの天火が手も足も出ないほど天華が強かったのが印象的だった
目標である兄のさらに上をいく姉
いつも優しく笑顔が似合う姉は、曇家の中心人物であり、空丸達の心の支えでもある
そんな姉を助けたいと思っても、実際は護られ、こうして兄の天火に背負ってもらわなければ帰れないほど、自分は脆弱な人間なんだと思い知らされた
「一一一降ろせよ」
「いや」
「降ろせって云ってんだろーー!!」
「腰抜けてるのに何云うのこの子っ!!」
後ろから聞こえる騒ぎ声に、天華は一瞬だけ振り返る
そこには涙を流す空丸の姿
『いっぱい泣いて、大きくなりなさい空丸』
小さくそう呟くと、天華はまた階段をのぼり始めた
場所は変わり、獄門処の中を看守と共に歩くのは曇天三兄弟によって逃亡を防がれた白髪にメガネのあの男だ
酷く怯えている様子の男に看守は云う
「"獄門処に入る科人(とがびと)はある物を持って来るべし"」
「もっ、持ってない!そんなの持って来れる訳ないだろ!?」
そう云う男に対し看守は顔色一つ変えずに云い放った
「それは残念」と…
そして男が入らされた厳重な扉の中には
鎖に繋がれた狐の面をつけている白髪の男性
天華達の両親を殺したあの男の姿に酷似していた一一
end
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