はい、と渡された物を見て龍可は双子の兄である龍亞を見つめた。沢山の福豆が入った箱は斜めになったりする度に独特の音をたてて鳴く。
「今日は節分だって。適合者探しばかりしてたから忘れてたけど、二人で暮らしてた時は一緒に柊作ってたじゃん?」
 さすがに豆は食べ物だから投げれなかったけど、と昔に浸りながら龍亞はD・ホイールに腰かけた。確かに生まれながらに貧乏だったから節分の日は食べられない魚の頭だけで厄除けをしていたが、なら何故こんなにも豆が沢山ここに。聞きかけたがゴドウィンから貰ったのだろうと一人納得して箱の中をじっと眺める。
「龍可ちゃんとオレは同い年だから〜、うーん…これだけなんて少ないじゃ〜ん!」
「龍亞、うるさい」
「おっと…ごめんごめん」
 だが小さな掌に乗った豆の数は彼の言う通り少ない。これだけあるのにどうしてひもじい思いを味あわなければいけないのか。むっとして頬を膨らます。福なんて呼んでも本当に来やしないのだからと鷲掴んで一気に口の中へ放り込んだ。
「あ!」
 それに気づいた龍亞が抗議の声を上げたが知らんぷりして噛み砕く。ケーキに比べたら甘くないし腹も満たされないし一粒一粒が硬い。なのにほんのり懐かしい味がした。決闘疾走に勝って少ない金を手に入れ一緒に買いに行った過去。次々になくなっていく龍可の豆に龍亞も吹っ切れたのか負けじと食べ漁っていた。

「…龍亞」
「ふぁに〜?」
「食べ終えたら行くわよ…」
 龍可の言葉にごっくんと大袈裟に呑み込みんだ龍亞は唇を舐め、食べ滓を掬う。
「オーケーじゃん」
 にたりと笑った瞬間に彼が纏った闇の瘴気の心地好さに知らずとも笑みが洩れる。箱をガレージの中に置いてD・ホイールの後ろへ跨がるとエンジンが噴き出した。小さく行って、と告げれば感じるのは夜風の冷たさ。あんなに自由に太陽を背負い込むことが似合っていた兄に、そこから動くことを赦されないカカシのようだと思い込み始めたのはいつからなのか。そんなこと遠に忘れてしまった。



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