!現パロ
!猫視点
ボクはブルーノ。今日はボクの御主人様、プラシドを紹介します。
まずは外見になるけど、毛並みは銀色でとっても綺麗なんだ。一見硬いようで実のところサラサラしてるから鼻を擦る度にくしゃみしそうになっちゃう。目は宝石を嵌めたような赤色。プラシドは全体的に真っ白な格好をしてるからそこだけ目立つんだよね。飴玉みたいにも思えて舐めようとしたら怒られちゃった記憶がまだ新しい。中身はそうだな、負けず嫌いで傲慢で口を開けば日頃の文句が飛んでくるし失敗続きな神様信仰家のせっかちさんってところかな。嗚呼あと寂しがりやな可愛い一面もあったりするよ。意外でしょ? きっとボクしか知らないプラシドなんだ。えっへん。
そんな話をしていれば部屋のドアがガチャリと開く。
「ブルーノ、いるのか」
「にゃあお」
ボクはここにいるよプラシド。足軽に急いでベッドを降りて彼の足元に擦り寄った。抱き上げられるとボクの身体は電気の灯りで黒から青へと変化する。前にこれを褒められてからこの毛が大好きになったんだ。誇りとも言えた。ごろごろ咽を鳴らしてるうちにベッドへ逆戻りしたボクは膝の上に大人しく収まる。居心地はもう最高。背中を撫でられれば気持ち良さでたちまち眠たくなっちゃう。目を瞑って尻尾で包むよう丸まると、途端撫でるのを止めたプラシドがボクの体を投げ捨てた。酷い! そう思いを込めて睨めばなんとでもないように鼻を鳴らしてきた。
「寝ると暫く起きないだろう。お前は重くて長時間は俺が持たん」
それはそうだけど…だからって何も投げなくてもいいのに。人間の言葉は理解できても話せない猫は上手に反抗もできずに心の中でだけ愚痴を言うしかないのだ。
けれどそれもすぐに治まる。なんてたって、ついに待ちに待ったご飯の時間だ。プラスチックのお皿に固形のやつと、なんと、今日は機嫌が良いのか缶に入った柔らかいお魚までお付きだ。美味しくて止まらない食事風景をプラシドはずっと眺めてきた。その視線が気になったけどボクはむしゃむしゃ一生懸命食べる。幸せってこういうことなんだなぁ。
ぴんぽーん。あ、チャイムがなったからお客さんだ。ボクには関係がないことの筈なのにどうしてかこの時ばかりは気になって尻尾をゆらゆらと動かした。今ごろホセさんが出てるだろうけど嫌な予感がする。だって現にプラシドが忙しないし、まさかまさか!
「こんにちは猫ちゃ〜ん!」
「ふぎゃあおおおぉ」
やっぱり予感は適中した! 不本意ながらボクと同じ名前をしたブルーノがボクを持ち上げてすりすり頬擦りしてくる。じたばた頑張ってあらん限りの力で抜け出そうとしてるのに人間に叶うはずのない猫は哀れ、腕の中に収まるしかない。こうなったら最終兵器の爪を使うしかないよね。威嚇して昼間磨いだばかりの爪で引っ掻こうとした瞬間、ボクの身体はひょいと簡単に奴の腕から脱出することに成功した。
「貴様は機械と猫のことになると周りが見えなくなる癖をどうにかしろ」
眉間に皺を寄せてボクを持ったまま話すプラシドへの好感度はこうしてまた上がっていく。嬉しくて尻尾を大きく揺らすとさっき重いと言っていたのに優しく包み込んでくれた。
「青野が恐がっていただろうが」
「あ……ごめんね、青野」
そう、こいつが来れば嬉しいのも束の間のことになる。プラシドは何故か人間のブルーノが訪問した時はボクを青野と呼ぶんだ。どうして、なんで、ボクの名前はブルーノだよ? 始めの内はちんぷんかんぷんで悩んでたけど今ではもう理由は分かってる。知ってしまったんだ。このブルーノという名はあいつから取ったんだってことが。ボクはプラシドを奪うあいつが大嫌いだから嫌で嫌で仕方がなくて、声を圧し殺しながら泣いていた。涙は当たり前ながら出なかった。それでもこの名前はプラシドが付けてくれたものだから最後まで嫌いになれずボクは誓ったんだ。あいつからプラシドを取り戻して次はお前を泣きっ面にしてやると。
「おい」
でもね、悪い予感っていうのは続くものだっていうのは初めて知ったよ。
「な…ん……っ!」
信じられない、プラシドからブルーノの口を塞ぐのをばっちりこの目で見てしまったじゃないか! 長い長いちゅーを終えたあいつの顔は真っ赤、プラシドは得意気にドヤ顔を披露。
「せっかくの機会にオレ以外に夢中になるなんて相変わらず胆が据わっているな、ブルーノ」
「えっ、ちょ、プラシド!? あ、青野が見てる前でそれは…!」
「ふん…その態度、余程の余裕があるらしいな?」
「そうじゃないよ!! まっ、……ぁ…っ」
ボクは一目散に猫用出口から逃げ出してルチアーノの部屋に避難していく。読書をしてたルチアーノは驚いて本から顔を上げたけどすぐに察したようにシーツに潜ったボクを怒ることなく優しげに叩いた。
「またあいつらか。お前も災難だねぇ…キェヒャハハハ」
全くもって笑い事じゃないんだけど、この子なりの慰め方だから双眸を綴じて甘んじて聞き取る。
御主人様は叶うことなきボクの一生片想いの相手です。