朝起きたら、ないものがありました。

「うおおおおなんじゃこりゃーっ!?」
 感情を表すようにぴんと伸びて膨張する尻尾にひくひく動く猫のような獣耳。まさかの事態にヨハンは叫んだ。思いきって引っ張ってみたら抜けるどころか神経が繋がっているのか痛みが走り尻尾は瞬く間に萎えていく。もしかしなくとも、本物なのだろうか。
「すげ…今のオレって耳四つじゃん」
 少し違ったところに着目点を置いてみたりするが本日は平日であれば勿論学校もある。一体全体どうやってこの事を隠蔽するかで不安が頭をもたげた。
「…ヨハン?」
「あ、わり。起こした?」
 そういえば昨日デュエルした後に十代の部屋で寝ちったんだっけ、と昨夜の事を思い起こしながらヨハンは寝ぼけ頭の彼を撫でる。まだ呆けているが眠い目擦って体に鞭を打ち、ヨハンの肩に寄り掛かってきた。その姿はたいへん可愛らしいが、そのままにしておくと二度寝に入りそうだったので全身を揺さぶる。
「十代、十代」
「えー…それオレの目刺し…」
「…駄目だこりゃ」
 すっかり夢の世界に旅立ってしまった彼は今ごろおかずを取り合っているのだろう。ヨハンはため息を吐き、たしっ…たしっ…と尻尾を左右に叩きつけていた。時刻を見ればまだ朝の五時ちょっと過ぎ。翔も剣山も、そして宝玉獣も怠惰を貪る時間だ。寝坊してばかりの十代が起きるわけないかと抱いた期待は雪のように溶け落胆する。たまたま早く目覚めたのは不幸中の幸いなのかは分からない。

 解決策も見出だせないままぼーっとシーツを眺めていたその時だった。
「ああっ!?」
 電流が身体中を暴れまわったような刺激に思わずヨハンの目には涙が浮かぶ。何事かと痛みを感じた尻尾の方を見れば先程まであんなに気持ち良さそうに寝ていた十代がぱっちりと目を覚まさせ弄り遊んでいた。何だこれはとこれ見よがしに手中でこねくり回すものだから堪えられたものではない。ふるふる小動物のように震えるヨハンと視線を交わらせると十代は呆然としたかと思えばすぐににやり口角を上げて先っぽを親指で乱暴に潰す。
「いぁっ…十代痛いって…!」
「これ作り物じゃなくて本物か?」
「そ、そうだから離しひぃぃい…!!」
 いきなり尻尾を口に含まれ、身構えてなかったヨハンは抑えもせず情けない悲鳴を上げた。口内はさぞや猫の毛だらけで大変だろうに、なんて考えてるうちにも十代の舌は先端を責め始め、ヨハンは堪らず身を捩る。だが離せて貰えず、手はついにスボンを捲って生え際に指を添えられた。
「やっ…!」
 下部を掌で擦られ羞恥に頬は染まる。声が出ないようシャツを噛み締めるがそれも虚しく、うつ伏せに押し倒されて丸聞こえになってしまう。どうしてこうなったと困惑してもそれを質問するための言葉は生まれず、代わりに聞きもしたくない自分の甘ったるい声が届いてきた。
「じゅ…じゅだ…、っ…もうむ…っり…!!」
「いっへもいーへ?」
「やだ、そこで喋んな! …っああああ!?」
 油断して猫耳の事を忘れていたところに急激に訪れた刺激の相乗作用もあってか呆気なく達してしまったヨハンは荒くなった息を懸命に整えきつく十代を睨む。しかし本人には反省の色が見えなく、それどころかぎらぎらと獣めいた瞳でヨハンを捉えていた。鳥肌を立たせながら慌てて目を逸らす。

 下着は当然吐き出したものでぐちょぐちょになり気持ち悪さが半端ではない。独特の臭いも好きではないので自身の物さながら眉をひそめた。
「どうすんだよこれ」
 朝になったら早く寮に帰ってシャワーを浴びようと考えていたから着替えはここにはない。あの二人が来る前に早く窓を開けて換気してほしいと願いつつも、へらへら惚けっぱなしの十代の顔面を尻尾でぺしぺしと叩く。すると幸せそうな表情をしたのでヨハンは躊躇なく顎に向けて頭突きをかました。言わずとも痛いが彼方はもっと痛かっただろう、前屈みになって凄く悶え続けていた。
 着替えたいのに着替えられない息苦しさに苛まれながら下着を捲り、中を覗いてみてため息を吐く。スボンにまで染みを作ってしまっててこれでは寮に帰るどころの騒ぎではない。直にあれを触られたわけでもなく、あんなので達してしまうなんて悲しくて顔を覆った。
「オレが何をしたって言うんだ…」
「ヨハンもう一回やらせて」
「この野郎」
 人が悲愴感に浸かってると云うのに性懲りもなく言ってくる十代の腕目掛け尻尾を当てる。こういう疲れてる時には動かなくて済むから楽なのかもしれない、うん。そうやって開き直りかけてるのを自嘲しながらぼふりと枕に埋もった。すると睡魔が途端にヨハンを襲い掛かり、重たい瞼をゆっくり降ろしていった。

 だが安眠妨害のようにかちゃかちゃ自分の下半身の方で鳴る金属音に意識は浮上せざる逐えなかった。何をしているのだろうと暫くは欠伸をしていたが下半身が外部に晒され冷たさに身震いしたヨハンは後ろを向いて十代を凝視する。
「なに、して…」
「やー…だってさっき飲めなかったから」
 清々しく答える事ではないだろうがヨハンの身体をひっくり返し仰向けにしたかと思えば十代は既に萎んでいたそこを指先でつつつとなぞり上げる。咽からひぐっ、と漏れた嘆声にこれからまた起こりうることを想像して逃げ腰になったが、尻尾を目一杯引っ張られ脱力してしまった。激痛に耐えている間にも揉み解され少しずつ元気を取り戻してきた自身から目を背けシーツを強く握り締める。ヨハンの良い所を知り尽くした動きに喘ぎは止まらなかった。
「ふ、ぁ…ああ…っやら、じゅ…らい…! やだあぁ…っ」
 上下に擦られ、挙げ句の果てには口の中へ収められてしまい目尻からは涙が止めどなく溢れる。鈴口を舌で圧迫されたり玉袋を揉まれたりなどされて度々気を失いそうになっても強い快楽ですぐに現実に引き戻されるので本当に気が可笑しくなりそうだ。限界が近いことを尻尾でてしてしと叩いて知らせればラストスパートをかけるように今まで以上の快感が襲い掛かってきた。
「っ…うあっ…!!!」
「……っ!」
 十代はヨハンから吐き出された白濁を全て呑み込もうとしたのだがどうしても口内から弾き出された精は口端から零れ落ちてしまう。顔に掛かってしまった分は掬いとって舐めたのだが、それを虚ろな瞳で眺めていたヨハンは羞恥に頬を染め恨めしそうにしていた。
「ん? 三回目もしたい?」
「誰がするか」
 即答で却下され残念と肩を竦めるわざとらしい仕草に白々しく思うも満足げである彼を見ると何も言い返せなくなるのだから自分は甘いのかもしれない。そんなヨハンを見透かしたようにキスをして来る十代の唇はとてつもなく苦いもので、顔をしかめる。こんな物を自ら飲みたがるなんて失礼な話、きっと彼はどこかしらが壊れているのだろう。舌も甘んじて受け入れるが鼻を通る青臭さはどうしても慣れない。えづきたくなるのを抑えて、腹に当たる固いものに膝蹴りを入れた。さて、狼が消沈してる間に猫をどうにかしなければ。





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猫の日なのにあまり耳と尻尾の意味がなかった(特に耳と後半)


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