memoより移行





 マーカーをなぞるように遊星の指が目下から顎にかけてゆっくりと動く。クロウはといえば、擽ったそうに身を捩っていた。
「こんなに増えて…まったく、目を離すとすぐ無茶をする」
「な…っ、お前の言えたことじゃないだろうが」
 機械ばかり弄って食べないし寝ないし話も聞かないし、と次々に述べられていく痛いところには背きたくなったが唇を塞げばそれも口の中で溶けていった。驚いて押し返そうとしたのも最初の内で徐々に口づけを受け入れていく。合わせるだけの随分長いものだったが最後にちゅっとリップ音を鳴らして離れれば、真っ赤な顔をしたクロウがそこにいた。
「卑怯なまねすんなよ」
 遊星の肩に凭れかかり上目遣いで睨まれても怖くもなんともない。それどころか可愛いと思ってしまう。意図せず溢れた笑みにクロウはむっと眉間に皺を寄せた。そうやって拗ねる姿も愛らしくてM字に描かれた額のマーカーに唇を寄せる。すると離れたと同時に頬を両手で包まれこちらの左頬のマーカーにもキスされたではないか。呆然として見つめるとクロウは得意そうに鼻の下を擦り、
「やられっぱなしってのは性に合わねえからな」
 と、まだ赤みの引かない表情ではにかんだ。忽ち熱くなる己の顔を抱き締めた彼の首筋に隠し目を綴じる。これでは卑怯なのはどちらなのか分からない。
「…クロウ」
「なんだ?」
「オレ以外にこういうことをするのは止してくれよ」
 多分彼は今きょとんとしているのだろう。幼子をあやすように遊星の癖のある髪を撫でて返事を言葉にはせず、背中に腕を回すことで静かに了承とした。





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言われなくても分かってるようで分かってないクロウと、そんな世話焼きクロウが好きだけど不安な遊星


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