覇王はオレに組み敷かれて喘ぐ、突き付けられてはまた喘ぐ。
 馬鹿だ、こいつは。十代の代わりになろうだなんてオレの中のお前はお前でしかないのに。それ以上に馬鹿で最低なのは親友を口実にこの関係を手に入れた紛れもないオレの方。ろくでなしと罵って殴られても当たり前なのにこいつはそれをしようとはしない。傷つくのは自分の役目だと黙って受け入れて。それがオレをより虚しくさせる。
「ひぁ…っ…ふ、…」
「十代…! 十代…!」
 本当はお前の名を呼びたい。でもそんなことをしたら今ある関係が無くなってしまいそうで怖くて駄目だった。

「……ヨハン…」
 どうして。そんな風に優しくされるとオレは付け上がってしまうから拒絶を表してくれ。頼むから。声が聴きたくなくてその口を貪って無理矢理黙らせる。

「十代、愛してる」
「…オレもだよ、ヨハン」
 一瞬覇王が十代に戻ったのかと思ったけれど瞳は変わらず鈴の色をしていた。果たして彼はオレを哀れんでくれたのか、それともただの出来心で言っただけなのか。どちらにせよ泣きたくなったのはしょうもない事実だ。
「ばかやろ…」
 震える声を隠すためにオレは止まっていた律動を再開する。上手く届かず聞き返そうとしていたのに急激にやってきた快楽に、覇王の美しい唇からは最早言葉とは言い難い甘美の叫び声が途切れなく洩れている。
(好きだ、覇王、お前が好きなんだ…!)
「覇王…!!」
「え…、やっああぁ…!」
 腰を動かすことに夢中になりすぎて抜くことすら忘れ精を中にぶちまけた。同時に果てた覇王の、とくとくと静かに上下する薄い胸板にオレは倒れこむ。体はすっきりしても心は苦しいまま解決しそうにない。



 情事後になると覇王は恒例と言って良いほどオレの髪と戯れて眠れるまで暇を持て余す。のだが、今回はそれをしなかった。
「どうした?」
「…いや、」
 なんでもないと顔を逸らす覇王に若干の違和感を覚えながら深入りはしないでおこうと双眸を綴じた。体だけの関係であるのに全てを知り尽くしたいと思うのはあまりにも欲張りすぎるから心に蓋をしたのだ。
 ちゅ、と目蓋に何かを感じても狸寝入りを決め込んで反対側に寝返る。今日のお前は気まぐれが過ぎるんだ。





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題:夜途

Twitterで書いたものに加筆修正。
R15にしようとしたけど恥ずかしかったので…うん。
相互片想いのセフレ。


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