肯定も否定もいたしません

木野は俺の中で母さんだ。実の母親なんてこれっきしも覚えてないけどごくごく普通の家庭にいる母さんの様だと思った。本人にしてみれば女子だし叔母さん扱いしないでって、そんな迷惑で笑える話だけど俺は真面目だった。

「ねえ。疲れてたらすぐに俺に言いなね?代わってあげるから」

皿を洗っている背中に向かって投げ掛けると後ろも振り向かないでせっせと手を動かしながら「大丈夫だよ」と断られる。それは彼女なりの優しさだと知ってはいるが頼りないのかなと情けなくなって頬杖をついた。時に木野は肩を上下に動かしてほぐしたりしている。疲れてるのは目に見えていたけど男がいきなり肩を揉んだりでもしたら変態扱いされそうで怖い。

「あ」

なんて事を考えてたら一枚の皿が割れた。行こうとして立ち上がったら椅子が倒れたけど直すなんて考えてる暇もなく焦って手を取る。幸いにも木野に怪我はなくて安堵の溜め息をついた。

「やっぱ俺に代わって。今の木野見てるとはらはらするから。座って休んで」
「…うん」

すんなりと受け入れるとは珍しい事もある。意固地な木野が素直すぎると嬉しいような苦いような。とにかくスポンジに泡を立てて皿を洗い始めた。殆ど残りはないけどそのぶん綺麗に磨いた。

「お兄ちゃんみたい。ちょっとおかしな」

ふふふ、と木野は言ったけどおかしなって何だ。俺にとっては母さんだから妹として見るのは中々難しいけど家族だからいいかもしれない。瞳子姉さんにこのこと言ってみたいな。よかったわねと言われるのを期待してる。
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