殺意に満ちた眼差しに背筋が凍るような悪寒に襲われた。荒々しい膨大な冷たいチャクラに動けず固まっていたら、一族特有の長い立襟を掴まれてしまう。

「どの面下げて戻ってきたナマエ…」

怒りと失意の混じった声が遠く聞こえるほど首を強く絞められる。血色の瞳がわたしの顔を品定めするためじっと合わさるが、酸素が足りず酷い表情をしているのだろう。軽く嗤って蔑んだ。

「ああ…お前はそんなに弱く醜かったか。その眼はただの飾りか。装飾品なら抉り取っても構わんだろう」

マダラ様が望むのであれば。

必死に口を動かすが襟を絞められてるせいで声が十分に出ない。しかし音が正しく発せずとも写輪眼で言いたいかわかってしまう。ナマエの忠誠心に満足したのかすんなり手を緩めた。

「……弱いうちはは不要だ」

受け身を取らせぬため持ち上げた身体を一度軽く地に着かせてから素早くぶん投げた。地に叩きつけると表した方が近い。いくら女でも片腕で軽く飛ばせるマダラの力強さに惚れ惚れする。
見惚れる暇なんてなかったのに、反応が遅れたせいで次の蹴りをまともに食らった。

「次の戦で千手の忍を一人でも多く仕止めろ。この駄犬が」

控え目にいって最高である。やっぱうちの族長様が忍界一。もう一生着いていきますぅご主人様。



「っていうシチュエーションのために千手に平伏して捕虜になったんです」

聞かなきゃよかった。
間諜目的でもないなら、何故此方にやって来たのか聞いたら気持ち悪い妄想を語られた。

「でも扉間殿が代わりにやってくださるなら帰る必要が無いんですよね」

降参し保護した女の忍を殺せば他の捕虜が不信の念を持つ。猜疑的になった者達への対応もせねばならんくなり、あと兄者がうるさく騒ぐだろう。
マダラの代わりなど御免だ。だがオレが適度にこの性的倒錯の女に構ってやれば無駄な騒ぎも起きず、うちは一族の戦力も欠ける。効率のよい選択をしたはず。

しかし、今になって過ちだったかもしれんと気づき始める。

「………そうか」
「…ああっ、いい」
「椅子が喋るな」

下で四つん這いになっている女の髪を引っ張ると歓喜をあげる。
女の細く柔い胴体では座り心地が安定せず、支える足や腕が細くて頼りない。腰を下ろすのに向かないがこれが一番効率のよい接し方なのだ。何を言っているのか訳がわからないと思うが、この女、うちはナマエは一定時間苛虐せねば不貞腐れて脱走しようとする。何度も脱走しかけたせいで此方の集落の見張りや結界まで網羅されてしまった。もうこの女を殺すか、この女に付き合うかしか選択が残されていない。

「帰る必要がないと言ったが、兄者が停戦協定の文を送った。もう千手とうちはが争うこともないだろう」

扉間は女を四つん這いさせて上に座る趣味なんぞ持ち合わせていない。人の上より普通に椅子に座りたいわ。ナマエの存在はうちは一族へ不可解を高めただけでなく、こういった対応をするたびに相手がこんな者でも一応年か若い女を痛めつけている事実に良心が苛まれるので正直、とても迷惑だった。

「直に帰れる…貴様らうちはが和平に承諾すればな」

早くこの女を返品したい。マダラ、頼むから和平に応じてくれ。まあ無理だろうが。

「その、モノ扱いされるの…好き」

逆効果だった。


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