卑劣の刃

※強く〜なれる〜理由を知〜ぃった〜〜ボークヲーコーエテースースメー

穢土で暮らしてたらまた口寄せされた。またか、今度は何で呼ばれた。生きていた頃は敵の悪罵にも負けず「効率のよい術を開発したものだ」と考えていたが、いざ己が被害者側になれば思考も変わる。死んだら変わるものと大蛇丸が言っていたが、三度目の穢土転生で「これ開発すべきじゃなかったかも」と後悔が頭を過る。いや、悪いのは作った忍でなく禁術を使う忍。いいか土影?本当に卑劣なのは術ではなく使う者だ。まあ生きてた頃は自分も使いまくっていたが。

いったい誰がワシを呼んだのだ…。
灯りのない部屋の窓から見える景色はどっぷり闇に漬かって、視界の頼りは月の光のみ。術者の姿はどこにもない。気配からして室内の中に誰もいない。穢土転生されるときは必ず隣に居た、抱き合せ商法ならぬセットで口寄せされていた兄者も居ない。知らない場所でワシひとり。
取り合えず目の前の襖を開けた。目にはいったのは古く褪せ痛みきった畳部屋、居間だろうか。真ん中には囲炉裏がある。土間が玄関になっていて最低限の狭い山小屋のような家屋だ。そして。
「なんだこれは……」
死体。
一家の虐殺現場、大人が子供を庇って倒れていた。遺体の多くは欠損している。金目のものなど無さそうな家人達は無惨に殺害されていた。暗くて確信が持てないが血の色からして殺されてからそこまで時間は経っていない。囲炉裏の火は消えかかった燠でなく赤い炭もあった。
忍とも無縁の家庭だっただろう。術の贄にされたのか。すぐに犯人を捕らえるため感知しようと血の染み付いた地に指を添える。
集中していたところ、チャクラのないドタドタ騒がしい足音が近づく。


「悪鬼滅殺ぅ!」

叫び声と共に勢いよく引き戸が開き、反動でまた閉じた。
今度は控えめな力でガラガラと開けるが、声は控えず更に大きく「悪鬼滅殺!」と再度吼える。まあ、なんとも間抜けな登場の仕方でやって来たのは。
黒い衣を身にまとい、帯刀した少女が一人。
鬼の形相で扉間を睨み付けていた。
「…貴方が殺ったのね」
腰の刀に手が触れる。チャクラの気配はなく忍でない一般人、にしては整った剣術の構えだ。
「また…間に合わなかった、助けられなかった…ごめんなさい」
耐える震え声で無念の亡き骸に視線をやる。少女の殺意と会話から察して、扉間は自分が置かれた状況を理解した。
「待て、ワシは何もやってない」
「私の眼は誤魔化せない。異様の眼色に生気を感じない身体…貴方は人間ではない…この化け物め!」

オレは人間ぞ扉間。
頭の中で全身柱間細胞の化け物が訴えて出てきた。呼んでないから帰れ。
卑劣だの卑怯だの姑息だの数多くの悪口は受け取ったが隣にケタ違いの忍が居たため、化け物と罵られたのは初めてかもしれん。

脳内兄者が邪魔をしたせいで、反応が遅れた。
「水の呼吸…壱ノ型」
それと、少女からチャクラを全く感知できず油断したせいでもある。
「水面斬り!」
忍と変わらぬ速さの剣術に、扉間は攻撃を避けきれなかった。忍でない子供から一撃をくらった。と、いっても穢土転生の身体であるため咄嗟に盾にした片腕は、斬られても塵が集りすぐに再生される。それより一瞬、水遁と同じような流水の幻が見えたような…。やはり幻術か。

その様子に少女が焦る。
斬った腕がもう生えてきている。この再生速度……かなり強い鬼だ。
「落ち着け誤解だ。生気を感じないのはもう死んでるからだ」
「何をわけわからないことを!」
禁術だからな。知らない人もいるだろうし、あれだけの騒ぎを起こしたら情報も規制されるだろう。少女が訳を知らないはずだ。
「ワシは穢土転生されてここにいる」
「江戸時代から生きてる鬼!?……通りで強いはず!」
「さすがに生きてた頃は穢土ではない。それと生まれたのは戦国時代だ」
「せせせ戦国時代ーーッ!?上弦並みじゃない私の敵う相手じゃあ………」

誤解を解こうとしたが余計に誤解された気がする。雰囲気からした少女は悪い人でない。この無惨に殺された人達を助けるためやって来たのだろう。なんとか犯人でないと説明しようとするが。
「……しかしッ!鬼殺隊の名誉にかけて!鬼は必ず倒す!」
「ワシは人間だ」
「人を喰らう鬼は必ず滅ぼす!」
「食べてない」
「死ね!」
雑になった攻撃を、扉間はわざと受けた。
どうせ死なぬ身体だ。チャクラのない剣士なら封印されもしない。日輪刀を頸で受け、ぼとり、頭が落ちる。
その拍子で伏せていた虚ろな眼と合う。欠損した四肢や肉体は、刃物でなく喰い千切られた跡があった。さほど荒れていない引き戸や家屋の出入口。これは獣の類いでない、臓腑を選り好みした何かが…。

「そんな…首を斬ったのに、なぜ消えないの?」

ひょっとして、犯人以前に、何か別のモノと間違われているのか。

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