静寂閑雅な扉間上司

※ぶらっく上司とびらま夏の小話


会議は踊ると言ったもので、兄者が一族一族の話に耳を傾けていたら様々な意見が飛び回ってしまった。木ノ葉への加入希望が増え、里開発を進めることになったがいちいち各々の要望を聴いていてはいっこうに進まんというのに。最低限の区画希望だけで決めてしまえばいい、人情もたいがいにしろ。わがままに耳を貸すな。
雑音の多い有意義とはいえない会議だったせいか、やけに家の中が静かに感じた。あの騒がしい代表の名前がいない。あの喋ることに人生をかけたような忍失格者の声がしない。なんということだ。まさか死んだのか、もとから死んでいる。穢土的な意味で。
任務という名の家事はしっかりこなしたようで、早朝に己が散乱させた書類がきれいにまとまって机上にあった。殺風景な部屋に生けられた花まである。ぬいぐるみやら謎の小物をおいたりする名前がなんとも趣深い選択をしたな。花に詳しくないため種はわからない。しかしそれが月明かりに照らされる様はまさに静寂閑雅……四文字なのでサブタイトルにしよう。

ガタンッ。
ドラム缶のような金属の樽が倒れた。
もうサブタイトルは決まった。本日の話は仕事で疲れた上司が部下のちょっとした思いやりに感動する話だ。それで終了だ。ワシはつっこまない。


「扉間さーん、いるんでしょ?これ起こしてください!」
「ワシは寝る。貴様は樽の中で寝てろ」

まとめただけでなく、簡単に選別までされた書類の上に某ゾンビ映画の題名が視界に入ったのはなかったことにしよう。

「穢土転生でゾンビ量産してバタリアンごっこしましょうよ扉間さん!夏にぴったりのホラーイベント!」
「里を壊滅させるつもりか」
「フィクションですよ、映画の撮影って設定で。ゾンビが里の民をゾンビ化させてだんだんゾンビが増えて……木ノ葉を潰す」

穢土転生でよみがえった本人であるにもかかわらず、名前は術の仕組みを理解していないようだ。穢土転生はそんな術ではない。後半物騒な物言いだが所詮こやつが考えたホラーイベンである。ノリで言ったのであろう。そして多忙であるワシはそんなノリにつっこんでやる義務も義理もない。騒がれると面倒なので樽だけ起こしてやることにした。

「ケホッ……樽の中、ちょっと煙たい」
「煙玉使ってまで再現しなくてよかっただろう…アホだったな貴様は」

「うぅ…カニ味噌食べたい。できればカニ足も食べたい」
「脳みそ要素はどこにいった。蟹が食いたいだけだろう」

蟹工船のように働かせてやろうと決意した。

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