しのびふれんず

 森という字は木が三つで成り立っている。文字通り木が三つであったら迷ったりしなかっただろうな。柄にもなくそのようなことを考えてきた。いくらチャクラを練っても生き物の気配すら感知できなかった。

 ここはどこだ。
 敵の幻術にかかったわけではない。一向に脱け出せない生い茂った樹林、土地勘を狂わせる自然エネルギーに『秘境』という可能性が浮かび上がった。

「……ろう…」

 (誰だろう。)
 微かな言葉が聞こえた。高さから女の声だと判断し、すぐさま音のしたほうへクナイを投げる。忍としての反射だった。

 口寄せ動物のなかには人の言葉が話せるものもいる。動物と忍はきってはなせない関係であり、木ノ葉の偵察部隊には鼻のきく忍犬使ったり対等な仲間として扱う忍もいる。
 だからこそ人陰のまったくないこのようなところで言語を聞いても驚きはしなかった。妙木山のような秘境にでも迷いこんだのだろう。
 飛雷神でとんだ先に忍でも何でもない街にいそうな普通の女がいたのは驚いたが。

「すごーい!君は素早いフレンズなんだね!」
「フレンズ……?」

 妙木山や湿骨林のような地は人間が迷いこんだら死を意味する。忍であれば話は別だが、体格やチャクラどころか頭も弱そうな女がこのような場所にいて大丈夫なのだろうか。街の女達さえもうすこし危機感というものを持っているというのに…。


「お前は誰だ、何故こんなところにいる?それにしても、ここはいったいどんな秘境なんだ…」
「ひきょう?君は卑怯なフレンズなの?ひれつー!」

 質問には答えてくれず、面と向かって人様に性格が悪いというニュアンスの言葉を吐き捨てられた。しかし、兄者とフレンズになって里を興した某一族の長や、どこぞの塵遁使いにさんざんな評価をいただいている身のためその程度の精神攻撃はオレには効かない。
 そんなことより情報をあつめなくては。ここはいったいどこなのか。自分がいままで何をしていたのかも曖昧だ。まさか幻術なのか。

「大丈夫だよ!フレンズによって得意なことはちがうから!わたしは名前って言うんだ」

 駄目だ。この女と話していると知能指数が下がりそうな気がしてきた。早々に会話を切り上げたい。

「あなたの名前は?」
「…扉間だ」
「とびらま。その格好、ねえトビラマって、もしかして忍なの?」

 もしかしてもなにも、額に刻まれた木ノ葉のマークで気づくだろう。甲冑をきこみ、忍としては少し古風な格好をしているだろうが。そう呆れていたがすぐに違和感を覚えた。なぜオレは自分の姿を古風と思ったのだろうか。まるで何十年先の忍達を見てきたかのような、自分が過去の人間だと自覚している感想だった。
 自分が生きてきた時代と、この時は違うのか。だがオレは目の前の女としか会話をしていないのに、そんなことを。過去になにがあったというのだ。

「忍は絶滅したって――」

 自分が何者かすら危うくなっている意識に、強い衝撃がはしった。




…ジャンプ力ぅ(飛雷神)と感知力と知恵をそなえたフレンズの冒険物語が始まらない〜強制終了〜

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