鍋がぐつぐつと煮えたところで、これを食べきれる自信がなくなった。鍋の前に焼き魚に揚げ物に刺身にでんぷん質も、飲み物も結構摂取した。わたしより食事量の多い男性三人は、前の飲み会で少々とはいえ既に食べていたらしい。お鍋どうしようかと考えているわたしに。
「ナマエには言っておくべきか……」
 深刻な表情で語る、腐れ縁の三人。この状況は、親友のイズナが作り出したせいである。

 遡って数時間前、イズナから言われたお店に入った。

「やはりナマエが来たか……ワシの勝ちだな兄者」
「クッ…また扉間に負けたぞ」

 悔しそうに財布からお札を取りだし弟に渡す伝説のカモ、千手柱間。わたしで賭け事しないでくださいと注意をしても、いつもの明るい声色で「ガハハ、すまん!」と悪びれもなく謝ってきた。

「ナマエ、イズナはどうした?」
「扉間が視界に入ると眼が腐るから欠席らしいです」
「眼は大切だからな…仕方ない」
「つっこむところそこなの?マダラ……」

 イズナから代わりに出席を頼まれた飲み会。やはりと言うべきかイズナの天敵、千手扉間がいらっしゃった。またアンタかよという面子ばかりの飲み会。
 イズナ不在プラスわたしが遅れてきたことにより孤立気味で機嫌を悪くしたマダラを宥めるため、わたしたちは早々に退場し独自で第二次大戦という名のマダラと夕食を共にする会が立ち上げられた。ただ飲み足りないし食べ足りないから千手宅できちんとした夕食を食べるだけである。

 面子といい話し合うくだらない内容といい、いつもと変わらなくないか?と思ったところで衝撃の告白を受けた。もちろん愛の告白ではない。もっと、それよりたちが悪い。柱間が植物だなんて。何言ってるんだこの人。

「……冗談ですよねアハハ」
「ちなみに扉間は人魚でマダラは…狼男のような狐のような…なにかぞ」
「もっと設定練ってから話そうか」
「仕方ないだろう。オレにもわからん…満月に反応するかと思えば月の満ち欠けには関係なく眼も九尾も使える」
「兄者、ワシは人魚なのか?」
「水を操れるし…瞬間移動も死者蘇生もできる有能な人魚ぞ。たぶん」
「飛雷神と穢土転生の術だ。それに、兄者は植物というより…木製の…仏像?」
「む?そうかの?」

 ちょっと何言ってるかわかりません。酔っているのか、寧ろ酔った人こ戯言であってほしいのに三人とも妙に真剣におかしなことを語りだす。鍋の火を止めて、隣に座っているマダラに馬鹿馬鹿しいと軽い言葉でもかけようとしたのに。なんで。

「なに…その目…」
「写輪眼だ」

 なにさ写輪眼って。アニメや漫画にある、クッ…オレの眼が疼くぜ的な感じですか?邪王真眼。中二病ってやつか、なるほど。きっとこの紅く紋様の浮かぶ瞳はカラーコンタクトだろう。マダラのグラスが殻だったため、新しいグラスにお茶を注ぎ渡す。酔っているらしいのでお酒は渡さない。早く酔いから覚めろ。中二病という名の病気から。
 なんだか何かを食べる気分じゃなくなってきて、喉も渇いてないのに自分にもお茶を注ぎ飲んだ。誰か、誰かつっこみを入れてほしい。

「扉間は…ボケってキャラじゃない。空気を読める常識人だと信じている!」
「言われるより見たほうが早い…兄者、木遁」
「えっ…見せてもいいのか?」
「ナマエなら大丈夫と柱間が言ったのだろう」
「むー……わかったぞ」

 木遁木分身。
 柱間はそう唱え、柱間が増えた。ずきずきと二日酔いのような痛みが頭にくる。なんなんだ、これは。入試直前や面接のときのように心臓がばくばくとうるさく騒ぐ。大変な事件を目の当たりにしてしまった気分だ。

「分身は意外と便利ぞ」
「キャンプで火をおこすのが楽だった」
「そういえばあの夏の河川で水面歩行は全員出来たとわかったな」

 思いついたように数ヵ月前のキャンプの内容をぐだくだと語り出す彼らに、全身の力が抜けた。イズナに出席を頼まれたけれど、さすがに男ばかりのキャンプに女一人で参加は無理だと断ったアレか…会話の内容からうちはサイドはマダラ一人だったらしく分身らしい樹木から生まれた柱間が「修羅場だったぞ」とわたしに耳打ちする。
 いやさ、そうじゃなくて、あのさあ……。


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