頭痛が痛い、は間違った言葉だ。けれど痛いを2乗したくなるほど頭が痛い。正確には生理痛が感じなくなるほどの偏頭痛で耳の上らへんの一部が脈打つように痛むのだ。まじでツラい。一般で売られている頭痛薬など効くはずもなく、だからといって保険証も無く身分証明はS級犯罪者が集う組織の一員です、という人が病院に行く選択肢はない。

 痛いといえばピアスまみれの我々のリーダーを連想する。ペインさん、あなたなんちゅうことしてくれたんですか。あなたこそが痛みを知るべきではないだろうか。よりによって生理痛で苦しむわたしが、愉快な橙色のぐるぐるお面野郎と任務だなんて。

「ナマエちゃあん!」
「チェンジ」
「そんな!今日からボクとツーマンセルで任務だというのに…っていうかナマエちゃん支度も全っ然できてないじゃないですかァ」
「チェンジで」
「アッ!ナマエちゃん、照れているんですか!?恥ずかしがらなくていいですよー、これから一週間は共に過ごす仲になるんですからァ。うふふ」

 女性の部屋に遠慮無く突撃し、ベッドの上で苦しむわたしにマシンガントークをかますトビくん。最高にウザイ彼は当然のようにわたしのベッドの端に腰を下ろそうとしたので足で蹴り飛ばす。
 こんな奴と〜雲隠れ一週間情報収集の旅〜とか勘弁してよリーダー。わたしはサソリさんを希望していたのに。サソリさんは短気だけれど時間や規則をきっちり守れば別に問題など全くない。さらには頭痛で苦しむわたしに薬をくださる神なのだ。リーダーより神、ゴッド。

「なんでトビくんなのよ…サソリさんがよかったのに……」
「サソリさんはデイダラ先輩と別任務ですって…もしかしてナマエちゃんサソリさんのことが!エェ!そんなっ、傀儡ですよアレ!さすがのボクでも傀儡との恋愛相談は受け付けられ…るっスね!面白そうですしアハハ!」

 ほっといても喋り倒すトビくん。病人のように寝込むわたしに空気を読まず身体を揺さぶって検討違いなことを話す。いい加減にしてほしい。
 わたしの頭痛は脳の血管が広がり神経を圧迫して起こる。サソリさんの調合してくださった頭痛薬は脳の血管を縮める作用のもの。煙草のように中毒もなく携帯しやすく飲みやすい、しかも即効性で一つ飲めば脳が異常に冴え半日もつ効力。わたしはその薬が欲しいだけだ。サソリさんは「これが効かなかったらボトックス打つからな。もしくは傀儡にしてやる」とか言いながらストック用もくれる意外にも優しく方だ。わたしのなかでサソリ株は高い。が、恋愛感情は皆無。

「……違うよ。サソリさんから貰った頭痛薬ストック切らして頭が痛いの。トビくんのせいで余計にね!」
「ボク何もしてませんよ?」
「手で胸を貫いてよぉく考えて」
「それをいうなら、胸に手を当ててでしょう!貫いたら死んじゃいますよ」
「しね」
「酷い!」

 ぎゃあぎゃあ五月蝿いトビくんに苛々しながら任務の内容を思い出す。戦闘の可能性もある情報収集、遠出で、辺りにはアジトもない。トビくんのいうとおり最低限の支度はしないと苦労するだろう。もう現在進行形でしているけれども。
 怠さを叱咤して這っているような体勢から身体を起こす。少し視界がぼやけているが頭が痛いため余り気にならず、遠征の支度をしようと立ち上がる。床に足をついたとたん、視界が一層ぼやけた。これはやばい。

「うわっ……と!ナマエちゃん大丈夫スか?」
「ちょっと、待て」

 一瞬、脳に血が回らなく目の前が真っ暗になる。相当ひどく一瞬といったけれど掴んだトビくんの肩に体重をかけて立っているのにまだ視界が暗い。頭痛ばかりに気をとられていたが、不規則な生活と生理で全体的に血が足りてないらしい。起立性低血圧よりも貧血に近い病状に舌打ちしたら脚に違和感、最悪なことに血が垂れていた。この体調でシャワーも浴びないといけないのか……やめろォ!わたしのライフは零なのよ。

「あー、ナマエちゃん生理だったんスか。女の子って大変っスね。子供つくるどころか結婚の予定すらないのに毎月来るなんて」
「もう少しオブラートにつつんで言ってよ……」
「結婚の予定ゼロってところを?」
「全部だよ……はぁ、シャワー浴びたいし支度出来てないから出発午後からでお願い」
「エェ!?そんな」

 トビくんはオーバーリアクションに困る表現をした。このアジトから雲隠れまでの道中にある人里は午後から出発したら到着は夜中になる。宿に泊まり、人柱力の扱いに長け管理も厳しい雲隠れの対策を練る予定だった。そうでなくとも保守的な雲隠れに潜入するのだから宿で身体を休めるぐらいの準備期間がないと。でも正直なところ、この体調でいつもの速さで走れる気がしない。

「お願いトビくん、出発午後からね」
「クナイ突きつけてのお願いなんてナマエちゃん強烈!だけどソノ願い事は聞けないなァ……ボクにも予定があるし。体調悪いのは可哀想っスけどね」

 こういうシビアなところは正に犯罪者組織って感じがするけどさ。だけどさ!

「そんな……」
「でもナマエちゃん頑張ってるしなー。一応感謝してるし…

 アッ、そうだ!ボクの眼、見ててくださいねナマエちゃん?」
「えっ」

 眼、眼ってぐるぐるなふざけた面の穴のところなのか。そう思考する前に、色々なものが吸い込まれる気分がした。自分の意識が無くなる。



 スッキリとはいえない目覚めに、眼にはいる景色は見慣れない。アジトとは違う客用に整えられた布団とシーツ。何処なのか、どうしてなのか。ぼうっとする頭に痛みはなかった。

「ナマエちゃん、眼が覚めましたかー」
「トビ…くん」
「ああ、ここ予定してた宿ッス。体調悪そうだったんでボクナマエちゃんのこと運んできました!なんちゃって!後、服とか下着とか血で汚れてたんで替えときましたよ。お風呂にも入れさせましたし、ボクって優しいでしょー!惚れてもいいっスよウフフ」

「は?」

 いつもの無機質な面でいつもの調子で話す彼に、わたしは再び悪寒と頭痛に襲われた。


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