忍の才があると長に言われた当時三歳だったわたしは、瞬身の術が使えた。犬や猫を見かけるたびに「わんこ!」「ねこ!」と叫び、親が少し目を離した隙にどこかに行ってしまい大層手を焼く子供だったらしい。チャクラの概念も教えてない子が向こう岸まで川を走って渡り、鷹を追いかけたことは大人もびっくりだったとか。不幸にもその鷹は罠に引っ掛かってしまい、残された雛の面倒を家族で見ることとなったのだ。

 そんなわたしを監視する面倒な役を押しつけられたのが、同年代で最も足が速く感知にすぐれた扉間ちゃんだったというわけだ。親同士の付き合いや一緒に修行していたせいか直ぐに仲良くなった。扉間ちゃんは戦ではヘッドギアをつけて大きい刀を持っているけれど、お目めがきりっとして華奢な色白美人さんだ。だった、のに。

「なんてこった。扉間ちゃん男子だったなんて、そんなの初耳だよ柱間くん」

「オレはむしろナマエが扉間を女子だと思っていたことが初耳ぞ」
「だって……細いし白いよ!」
「確かに扉間は白いが」
「それにかわいい、かんわうぃいよ」
「弟はかわいいものだが……うむ」
「もう扉間ちゃん女子だし」
「どうみても扉間は男ぞ」
「なんで?」
「なんでと言われてもな」
「かわいいじゃん」
「オレから見ればかわいい弟だが、いや扉間はかっこいいぞ。甲冑姿とかどう考えても男ぞ」

 わたしから見れば髪を伸ばして簪つけたらどう考えても女子。扉間ちゃんを守ってあげるために修行頑張ってきたのに、もうすでに扉間ちゃんのほうが強いけれども。将来は仏間様みたいになるのかな、すっごく嫌だ。
 変な髪型の柱間くんは子供の中で一番強いため男の子だと納得できる。よく外で遊ぶから肌も健康的だし活発で明るい。それと正反対で強いところしか共通点のない扉間ちゃんが男とか認めません。口調は男らしいのはクールビューティーなのです。声低いけど。

「じゃあオレは出かけてくるからよろしくたのむ!」
「えーまたダラマくんって人と遊ぶのぉ」
「マダラな。無理やり扉間と文字列を似せようとして別名になってるぞ」
「わたしが柱間くんに渡した鷹だってあげちゃったんでしょ」
「喜んでたぞ!」
「えへへ」
「あと、よくかすみ網に引っ掛かるらしくて『前の飼い主が馬鹿だったんだな』って言ってた」
「マダラぶっ飛ばす」

 わたしの飼育方法ではなく親の遺伝なんだと柱間くんに訂正してもらう。ちなみに柱間くんに鷹をあげたのは、親が、自分で育てた鷹でしょうきちんと面倒見なさい、とおっしゃたため。わたしは扉間ちゃんとの修行で時間もなく柱間くんにプレゼンドフォーユーしたのだ。人はそれを押しつけたという。

「行ってくるぞナマエ」
「あっ、ちょっと」
「扉間とよろしくなァー!」

 爽やかな風を纏い颯爽と去ってゆく柱間くん。扉間ちゃんと二人っきりのフラグが立ってしまった、どうしてくれるんだ。困ったことに今まで「かわいい、かわいい」と言っていた扉間ちゃんが男だと知ったとたんに変な風に見えてしまうのだ。かわいいのに、低い声が目立ったり。修行のときの一々男らしい動作が思い出される。
 どうしよう。悶々と頭のなかで考えていたら馴染みのチャクラを察する。一直線に此方に向かってくるそれは明らかにわたしに気づいていらっしゃる。逃げることもできないじゃないの。ふと空を見上げたらトンビが円を描きながら鳴き声を上げて飛んでいた。いっそのこと空に逃げたい。びゅーんって。
 姿を視界に捉え安心したのか、大きく地を踏んだ音が聞こえた。

「ナマエ、兄者は今日も出かけてるのか」
「うん。そだよ、柱間くんいない」
「またか、やはり父上に相談すべきか。
 ………どうしたんだナマエ。顔を隠して」
「なんでもないよ扉間ちゃん」
「……そう呼ぶのやめろと言ってるだろ」

 いっそう声を低くして言うもんだからビックリして顔をあげてしまった。扉間ちゃんは覗くようにわたしを見ていたらしく、至近距離でさらにビックリした。よく見ると柱間くんの言う通り男っぽい。というか男だ、男子やん。なんで扉間ちゃんを華奢な女の子と思っていたのか不思議なぐらい男子じゃないか。きっと柱間くんもそう思ってるに違いない。でも、やっぱり。

「美人さん!」
「は?」
「扉間ちゃんは将来美人さんになるよ!」
「馬鹿にしてるのか」
「うーん。なんかもう、ずっとそのままでいてください」

 呆れたように扉間ちゃんはわたしを見てた。扉間ちゃんは、数年後には頼もしくて逞しい忍になるとか。


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