※2020

 コシタンタンとしていた月の眼計画もそろそろ実りそうになってきている。虎視眈々って、らんらん音符、みたいに楽しそうな語感よね。わたしがそんな思いを抱いているなか、マダラ様は第四次忍界大戦へむけて作戦を練っていた。我らにとって新たな仲間だ!に、なった薬師カブトと一緒にな…。

 カブトが関わる前からそっこうで戦力外とマダラ様に言われ「開戦したらナマエはゼツと共にサスケを見張ってろ」と存在意義のない役目をもらった。そのためこの作戦会議でやることが無かった。そもそも会議の発言権もないだろう。暇すぎてカブトの所持品である囲碁的な石でおはじきしだすぐらい暇であった。

「あの〜…マダラ様…」
「お前はじっとしていろ」

 だからって、この扱いは酷くないだろうか。鬼鮫先輩や薬師カブトと同じように、わたしだって戦利品を持ってきた暁の一員だ。

「あの…これ、忍連合の額宛…」
「成り変わりの術を使う白ゼツには不要だ」

 スパイ活動の戦利品、連合の忍達にこっそり混ざって手にいれた額宛を存外に扱われた。まだ連合全体に行き渡っていない、発注したてのほやほや額宛なのに。鬼鮫先輩みたいに敵軍情報や薬師カブトのように戦力を提供できないわたしの精一杯の頑張りなのに!
 いじけて碁石をマダラ様のほうへ弾いたら「戦利品なら八尾か九尾を持ってこい」と言い渡された。マダラ様ったら無茶ぶり過ぎる。わたしごときが人柱力を持ってこれるならマダラ様は戦争なんて起こさないし、月の眼計画自体も数時間で成せると思う。
 茶化しているのではなく呆れているように「ナマエには無理だろうな」とため息をつかれた。大戦が近づくにつれマダラ様は冷たくなっていった気がする。その少し前はサスケサスケとサスケ君にべったり。

 ああ、一緒にバカやってたトビだったころが懐かしいなあ。あの橙の仮面が懐かしい。

「仲間って感じがしないんだよね…そのインテリさんも」
「ボクは君より大戦に協力してる有力な仲間さ」
「うさんくさい」
「その心がけはいいぞ、ナマエ。薬師カブトは信用するな」

 サスケ君の見張り役だからか、マダラ様はわたしのカブトへの評価を褒めてくれた。そんなやり取りを「酷いなあ」なんてカブトは笑ってあしらった。こういう態度がうさんくさいんだよね。そもそもこの組織がうさんくさい。マダラ様の戦闘用仮面とか以前より胡散臭さが倍増している。

「わたし達にもこういう額宛みたいなのが欲しいなー…」

 暁の象徴であった衣も、今はわたしだけしか着ていない。マダラ様とサスケ君にうちはの家紋という共通点があるだけで、忍連合のこの額宛のようなものはなかった。
 暁の…、月の眼計画実行委員会の新エンブレムが必要だとわたしは思う。

「でもデザインなんて出来ないし」
「芸術家でも呼ぼうかい?」
「カブト、今此処でデイダラ達を穢土転生すればお前を殺す」

 マダラ様がカブトを牽制して、芸術家にデザインを発注する案が消えた。そんなあ、わたしが考えろって言うのか。芸術の感性もセンスもないこのわたしが、今の暁を象徴する御旗を作れと申すか。

「そんなの無理だよ…月の眼計画だから満月でいいかな」
「何処の国旗だ」
「クッ…じゃあ!十尾復活を祈願して尾をつけて」
「触手みたいだな」

 しまった!十尾の容貌がわからないから適当に顔と口を描いたら失敗した。これでは別漫画になってしまう。同じ雑誌でも許されない。ダラせんせー…デザインって難しいです無理です。落ち込んだわたしにカブトが話しかけた。


「ボクは君達の計画を詳しくはしらないんだけどさ…」

 わたしが四方八方に散らかした碁石を集めながらカブトが言った。

 わたしとマダラ様の会話に割りはいって親しもうとしてるのか。油断は出来ない。蛇がマダラ様の足下まで来て散らばった石を口にし、回収していた。わたしが弾いた碁石はけっこう遠くまで飛んでいたようだ。

「そのエンブレム、第三者のボクが考えてあげるよ」
「何を企んでいるの薬師カブト…暁で何の役目ももらえないわたしへの当て付けかしら?」
「当て付けじゃないよ、仲間として戦力以外も提供しようって事さ…」

 カブトは袖から巻物を取りだし、それにするすると紙に描きはじめた。これもわたし達へのパフォーマンスの一種らしい。信用していいのか、どうなのか。カブトは下絵も無しに描きすすめていた。

「月の眼計画ってTSUKINOMEだよね、こんなエンブレムはどうだい?」

 描き終わって、巻物をわたしに渡した。横からマダラ様が巻物を覗く。

 薬師カブトが描いた、異国の文字になぞられた月の眼計画の…TSUKI、新エンブレム。右上の赤い満月や魔像の杭のような黒い中心線やT文字みたいなものがどこかで見た記憶があるような、ないような。この感情は既視感というものだろうか。しかしはっきりと思い出せなかった。

 そうだ!これは既視感ではなく、素晴らしいデザインによる親近感なのだろう。あまりにも我々のエンブレムにふさわしくて身近な存在に思えた親近感に違いない!

 五輪…じゃなかった。五大国の忍連合に挑む我々にふさわしいデザインだ。

「薬師カブト…やはり天才!なかなかやるじゃないの!」
「一般忍者の君に理解してもらえるとはね」
「マダラ様、我々のエンブレムこれでいきましょう!」

「イケルワケナイダロ」
「ふざけるなカブト。それとナマエ、お前は先に黄泉の…愛だけの世界に送ってやろうか?」

 黄泉に送られたらカブトに穢土転生してもらおうと思った。


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