新たに会得した術は何かと試したくなるものだ。

「ナマエ、話がある」
「ひっ…」
「オレは戦場で不完全な術を使うなとあれほど言ったよな?」
「………はい」

 いつもと同じ無表情で扉間が話しかけられ家に連行された。扉間のお家はわたしの近所にある族長、柱間様が住んでいらっしゃる家だ。散らかっているわたしの部屋と違って綺麗で日当たりのよい畳に柔らかい座布団、そこに正座するわたし…うわー嫌だな…扉間説教コースだ。

 先日のうちは一族との戦で、わたしは扉間から教わった新しい術を実戦で使った。新に会得した水遁の術、何かと修行や稽古に付き合ってくれる近所のお兄さん扉間直伝の術だ。自信満々に狙われた豪火球を迎え撃とうとしたら不発で死にかけた。正直、焦りや辞世の句を考えるより恥ずかさでいっぱいだった。散々かっこつけて印を結んだのにチャクラが足らず不発……わたしダッセー!

「オレが側に居なければ今頃どうなっていたか」
「丸焼き?」
「………」
「ご、ごめんなさい」

 冗談でも不吉なことを口にしたら駄目だったみたいで、扉間は軽い調子である本人のわたしをギロリと睨んだ。
 相変わらず目付きが悪くて怖い人。忍として尊敬しているし師として色々とお世話になっているがこういうところは苦手である。

「あの…本当に反省してますので」
「反省では足りん。今後二度とこのような事が起きぬよう」
「はい!心して修業に励みます!」
「いや、オレの家から一歩も外に出させん」

 なにその極論。いいえ暴論は。

 家に引きこもっていたら戦場でピンチに陥ることもないだろうさ、でも違うでしょう扉間!

「嫌か?」
「嫌っていうか…」
「ならばナマエ、貴様に飛雷神のマーキングを付ける」
「えっ…あの」
「これも不満か?」

 なに今日の扉間…近所のお兄さん的立場なのにおかしいな、なんだか怖いぞ。

「怖いだと。オレはただ幼い頃から家族のように想っていたナマエが心配なだけだ。貴様は危なっかしい過ぎるのだ」
「扉間……」

 目を伏せ想い更ける仕草の扉間に心が打たれる。彼が感情的になるのは珍しいのだ。

 そうか……わたしは人生の恥ずかしかった修羅場と片付けた出来事も、少し間違えればこうして扉間と会話をすることもなかったかもしれない。戦は死を伴う。だからこそ扉間はわたしに慎重になって欲しいのだろう。飛雷神のマーキングだって、わたしに万が一のことがあったときに助かる手段になるかもしれない。プライバシーを侵害されているみたいで嫌がっていたけれど、わたしの為を思っての理由なら良いかもしれない。わたしを家族のように想ってくれる扉間なら安心できる。

「そしてナマエを二十四時間監視したいだけだ」

 前言撤回、安心できないわ。

「……二十四時間、監視は…ちょっと……」
「今さら何を恥じる。オレ達は子供の時に誓い、夫婦のように想い合っていただろう」
「恥じらいじゃなくて。あれっ、家族ってソッチ!?兄妹じゃなくて夫婦?」

 子供の時の誓いって何ぞや。知らぬわ。大きくなったら扉間と結婚するのーと、定番の台詞を言うほど親しい仲じゃなかったでしょう。あなたは近所の術を教えてくれる千手の手練れのお兄さんです。先輩と後輩の仲だった。

「それすらも拒むのか」
「普通は拒むよ」
「クッ、うちはの忍に殺されるぐらいなら…いっそオレがこの手でナマエを」
「落ち着こう、いつもの最高に冷静な扉間に戻ろう」

「安心しろ穢土転生してやる。いや待てよ、死体では家庭を築けど子を成せんな…どうしたものか」

 どうしたものかって、扉間がどうしちゃったんだよ。扉間がわたしを好きだってだけでも悪い冗談なのに、この愛の重さはなんだ。わたしの知っている愛の千手一族ってこんなんじゃなかったはず。悪いものでも食べたのかな。それとも幻術にかかっているとか。
 おかしな扉間を目の前にわたしこそ幻術にかかっている可能性が出てきて解をしてみるが効果なし。術者を捜そうとチャクラ感知したら圧倒的なチャクラ量のお方が襖の向こう側に居た。

「扉間は家の中だといつもこんな感じぞ」
「族長…マジすか…」

 襖を頭一つ分ほど開けて族長さんが小声で話しかけた。知りたくなかったよその事実。近所の頼れるお兄さん像の扉間がぼろぼろと瓦解していった。

「ナマエ、オレ以外の男と話すな」
「この男はあなたのお兄さんですよ」
「兄者も駄目だ」

 あの扉間がこんな小娘に対して独占欲が高いとか、やっぱり夢だなこれは。悪夢だ、悪夢。誰よわたしにこんな幻術をかけた輩は。やはりうちは一族なのか。

「いつもこんな感じとか冗談が過ぎますわ柱間様」
「いや本当ぞ。いい加減鬱陶しくての…」
「兄者の落ち込み癖よりましだ」
「頼む!扉間と早く身を固めてほしい族長からの、そして扉間の兄としてナマエにお願いしたい!」

 この夢、八方塞がり過ぎやしませんか。


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