この高校は二学期が終わっても午前補習があり本当の冬休みは年末からだ。赤点者の場合は午後補習が追加されクリスマス消滅、補習後の再テストに落ちれば単位が足らず留年。
 休み明けの課題確認テストに落ちれば慌ただしい三学期を迎えることになり、更なる課題を渡されてまう。気ののらぬ午前補習だろうと、生徒は九十分間の授業に勤しむのであった。特に赤点で再テストが待ち受けているうずまきナルトは通常の授業より真剣だった。

 バキッ――。

 皆が一斉に視線を逸らす。ある者は黒板をノートに写し、写し終えた者は辞書や補習用教材を見直す。教師と目が合わぬよう必死に何かしらの作業をする。

 古典担当、うちはマダラの指圧に耐えきれずチョークが粉砕された。

 別名、日直殺しと呼ばれるほどマダラの筆圧は強く奴の使用した黒板を綺麗にするには黒板消しクリーナーを二度使うと言われている。そして自分の授業で黒板が少しでも汚れていた場合は……言わないでおこう。お気に入りの生徒が黒板消し担当の日はプリントを使用し黒板を使わないことは言うまでもない。

 暖房は充分効いているはずなのに青空教室で大寒波に襲われたように教室の気温が下がる。うちはマダラが不機嫌だからだ。
 乾燥したこの季節に珍しく雨が降り、湿度で弱ったチョークが粉砕……それも本日二回目だ。梅雨や台風の季節に五十分の授業で三度チョークを粉砕したときはナルトを集中攻撃して気が紛れたが、そのナルトが真面目に授業を受けているため当たれる生徒がいない。

 マダラは粉砕されたチョークの破片を払い捨て、教室を見渡す。目を逸らす生徒達、非の打ち所のない真面目な授業態度。
 その中に一人、浮かぶ孤島の名をマダラは呼んだ。

「うちはナマエ……起きろ」

 大した奴だ…さすがオレの妹、怖いもの知らずにも程がある。ナマエはマダラの授業で爆睡しているのだ。暖房の効いた教室、膝元には長いブランケット、両腕で枕を作り幸せそうに寝ていた。
 さすがにお気に入り生徒でも、ここまで大胆に居眠りしていてはマダラは見逃させなかったのだろう。テストの採点はナマエだけ甘く、見逃しまくっているが……。

「ナマエ、起きろ」
「うっ…?」

 低い声で凄まれて寝ぼけていたナマエが覚醒する。暖かそうな様子から一気に冷めきった青い顔に変わり、やっと状況を理解したナマエが謝罪の言葉を口にした。
 それにしても、マダラの奴はどうしたんだ。あんな凄んだ声にこの態度…ナマエはお気に入りの生徒じゃ無かったかのか。

「すみません…」
「そんなにオレの授業は退屈だったのか」
「……違います」
「ならば何故寝ていた?」

 苛立ちの入った声だった。今のマダラは気に入らない生徒に対するいつもの態度と同じだ。

「ごめんなさい……」
「もういい、オレの授業で寝た事実は変わらん。罰として課題を出すぞ」
「はい……」

 一瞬教室がざわついた。うちはマダラはナマエを甘やかすためだけに教師になったと言われる男だ。あのマダラが、罰としてナマエに課題を出すだと……!
 マダラは騒がしくなった生徒達をひと睨みし、皆に補習の重要さを話し出した。

「休み明けの課題確認テストは二月の模試を意識している……ただ課題をやるだけでは点は取れんぞ。テストは補習の内容が六割だ」

 マジかよ、本当にそれは確認テストなのか?確かに補習の内容も出ると言われたが六割も、課題の範囲を暗記すれば確認テストなんていいもの思っていた。これでは普段の試験と変わらぬではないか。課題も多く、補習の内容だってこの授業ペースなら普段の試験範囲と変わらぬ量の題材をやるだろう。……この高校は模試も多く色々と面倒だな。

 マダラは一旦教卓に戻り、自分の鞄からクリップで纏められたプリントを取り出した。見た感じ冬期休暇の課題と比べると少ないが、罰として課すには多い。
 そのプリントをナマエに渡しマダラは呟いた。

「だから、此方の課題をやった方がいい」

 待て…マダラ、お前今なんと言った。

「此の課題をしっかりやれば確認テストは七割近くは取れるだろう。…現代文は範囲の漢字とワークをやっておけ」
「はい……」

 悲しそうに返事をするナマエ。気づけ、確認テストは現代文と古典が合わさって国語科目のテストとなるんだ。現代文の補習はないためワークと漢字、古典の課題が残りの三割。
 それらは勿論、ワークは問題そのまま出題されるから暗記するだけでいい……つまり、そのプリントがあればほぼ満点取れる。
 マダラは続けて課題の説明をした。

「お前には此を課すから配られた課題はやらなくていい。あれは休日を遊ばせぬよう、重要でもない文も書かせ時間がかかるだけの課題だ……しかし、あれに出題される古典単語は覚えておけ」

 その時間がかかるだけの課題ををオレ達にやらせるって訳かよ。ふざけんな。

 何が罰として課題を出すぞ、だ。課題の量が減ってんじゃねーか。夏期休暇はここまで甘やかせちゃいなかったぞ。あの声色、ただナマエが寝ていて拗ねただけだろ……。マダラはいつものナマエへの接し方に戻っていた。贔屓もいい加減にしろ。

「学生は勉強に励むべきだが年末年始ぐらい休め。……正月はオレの家でゆっくりするといい」

 オレの家、その言葉に引っ掛かった。

 正月と盆休みには本家に挨拶しにいく。しかし盆明けの登校日に提出する課題が真っ白なナマエはお留守番。親戚が集まる最中にナマエが不在でマダラは終始不機嫌だった。

 だからナマエの冬期休暇課題を……この教師、私利私欲しか考えてねェ…。


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