※現パロマダラ寄り


 チャイムの音が聞こえるが、一度無視する。非常識な時間帯の訪問者を出迎える必要はない。……が、三度とチャイム音が繰り返されれば近隣に迷惑がかかってしまう。仕方無く寝具から起き上がって玄関まで向かう。
 何かをやらかしミトに追い出された兄者か、それとも終電を逃したヒルゼン達か。前者は許してもらえるまで土下座外交をしオレを頼ることは無いだろう。ヒルゼンやダンゾウがオレのマンションを宿代わりに使うわけない。
 残された選択肢は一人しかいない。

「やはりうちはナマエか」
「だから結婚してないから苗字うちはじゃないってば!」

 挨拶も謝罪もなしはナマエ怒り出した。マダラと籍を入れたと噂を聞いたが違ったらしい。

「用事は何だ」
「泊まらせてほしいです…」
「……断る」

 籍は入れてなくとも、兄者達の話によればあのマダラと恋仲の女だ。日々の会話文から察するに同棲もしているはず。いくら学生時代から続く友人だろうと男のオレが泊めるわけにはいかない。第一、マダラに恨みを買われたくない。

「ファミレスやネカフェで時間を潰せばいいだろう。そこまでなら送る」
「……財布も携帯も置いてきちゃった」
「無利子で貸してやる」
「もう疲れたから歩きたくない…」

 ならば車を出してやろうと思い、鍵を取りに一旦部屋の奥へ戻ろうとした。何故か玄関から部屋に入るナマエ。その無遠慮差に呆れていたら気まずそうな態度に変わった。オレが迎い入れたと勘違いしたらしい。無作法というより天然だったのか。

「扉間…ごめんね…」
「車を出してやるから待て」
「……うん」
「上がって待っていろ」

 マダラと極力関わりを持ちたくないが、泣きそうになっているナマエを放って置きたくもなかった。原因や理由は部外者のオレには一切解らない。しかし夜中に女一人が家を飛び出て、マダラは何もしていないことに腹が煮えくり返る。無事にオレの部屋までたどり着いたからいいものの道中事件に巻き込まれる可能性だってあった。
 唐突に飛び出したのか、財布や携帯どころか上着すら着ていない。夜は冷える季節だ。

「エントランスが暖かかった…」
「オートロックじゃなくてよかったな」

 ナマエなら自動施錠でも、二階まで外から上がって非常階段でこの部屋まで来そうだ。

「マダラに連絡したほうがいいか?」
「えっ…やだ」
「イズナ経由なら大丈夫だろ」
「やだやだっ大丈夫じゃない!出てってやるって飛び出したのわたしだし!」

 お願い扉間と懇願されてた。
 飛び出したナマエに非はあるとしても追いかけないマダラもマダラだ。恋人が夜中に衣服一つで飛び出して就寝できる精神をマダラが持ち合わせているとは思えない。今頃イズナや兄者に時間を考えず連絡を入れてるはずだ。
 敵視しているオレには何も言わないだろうが。

「飛び出すにしても時間を考えろ」
「だってマダラが…!」

 車の鍵を手に取り簡易に着替え、いつでも部屋を出る支度は済んだ。
 ナマエが落ち着くまで、話を聞く流れになる。

「マダラに…ドレスシューズプレゼントしたの。うちはの家からしてみれば大したことないんだろうけど、結構高かったの。男性の革靴なんて知らないから色々調べたりして…」

 目尻に涙を浮かばせる#nane#が呟かれるブランド名に聞き覚えがあった。

「気に入ったから柱間にも同じ物プレゼントしたって言うの。誕生日に……」

 ……先日の誕生日に、兄者がマダラから貰ったと自慢してきたやつだった。数万もするプレゼントを友人に贈ったことには目を瞑る。二人の仲の良さや収入比からして、気に入った本や良い店を勧める行為と同じだろう。兄者から聞いたときは足のサイズを知っていることに気味悪さを感じていた。

 ナマエの話を聞いた今は、恋人のプレゼントと同じものを買って贈るマダラの神経が信じられん。同じブランドを勧めるだけならまだしも、全く同じものを贈ったのか。天然なのか馬鹿なのか。何も考えてなかったのだろうか。

「あんなに調べて…お店の人に聴いたりして…」
「言いたいことは解るぞ」
「マダラが善行のように語り出すから!わたしが悪いみたいになって…!」
「ナマエは悪くないからな」

 溜まっていた涙が溢れた、ぼろぼろ落ち続け止まらなくなった。泣いた女を連れまわせられず、もう何処にも出掛けられない。
 箱ごとティッシュを渡し小さい頭を抱き寄せ軽く叩くようにあやかす。ナマエとの間柄は学生時代からの友人と言うよりは兄弟に近い。手のかかる妹、周囲からもそう思わせているだろう。虚しくもナマエがオレに恋愛感情が皆無なのが原因である。

「……扉間と付き合ってれば、よかったのに…」

 その言葉に期待してしまう自分に嫌気がした。


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