「ふとん返し」

 ばさりっ。
 わたしを包んでいた優しい温もりが消えた。マイ羽毛布団が悪名高きうちは一族の頭領によってひっくり返されたのだ。なんて横暴な!お得意のうちは返しみたいに言ったってクスッともこなかった。マイナス3点。

「いい加減起きろ、いつまでに寝ているつもりだお前は」
「マダラが寒いこと言ったせいで冷えた。布団返して…」

 それにしても、あのうちはマダラが女の子の寝室に来るなんて…誰だマダラをわたしの部屋に寄越した者は。わたしの任務怠慢による第一被害者、千手扉間の可能性が高いけれどマダラが奴の頼みを進んで聞くとは思えない。何故来たんだマダラァ…布団返して。

 マダラが掴んでいる布団にすがり付く。少し温かさが残っていた布団は被っているときとは違った柔らかさが居心地よかった。これが抱き枕って奴か…最近寝る体勢が決まらない夜が多いので、今度柔らかい抱き枕を買おう。

「昼にこんだけ寝てりゃ夜寝る体勢に困るのも当たり前だ、起きろナマエ」
「いやどす」

 布団にぎゅうきゅうしがみつきマダラから奪取を試みるが力の強い奴から奪うことは出来なかった。ああ、愛しのおふとぅーん…。

 窓から日の高さを見る。夏の頃より低くなった位置で、部屋に入ってくる明るさはかなり少なくなっていた。ここは冬になると日当たり悪いからね…。

 秋分が過ぎれば日が暮れるのが早くなって夜が長くなるため、夏の明るさから抜けられず寝坊することが増えた。寝坊してもなお、ほどよい気温に身を任せ起きても再度寝てしまうのだ。目覚まし時計に睡眠薬等いろいろ試した結果、無理に運動の秋を楽しまなくてもいいことにした。食欲の秋だけ漫喫しよう。寝転がりながら読書の秋も楽しむ。

「今こんな状態なら冬はどうするつもりなんだ」
「冬眠」
「……太るぞ」

 うちはマダラ氏から豪火球直撃の言葉をいただいた。ゆっくり胸に傷が広がってゆく言葉であるが、そんなことは百も承知!最近はじめた糖質カットダイエットなめんなよ!そんな言葉、痛みさえ感じやしない!

 あ、でも昨日は焼き芋食べちゃった…糖質カットダイエット駄目じゃん。今夜は栗ご飯の予定、食後はスイートポテト!全然カット出来てない!

 十五夜に団子を貪った前科もありマダラの言葉は結構重かった。知っていたさ…夏に思ったほど減らなかった体重が冬に向けてじわじわ増えていることに。解ってんだよこのままじゃ駄目なこと。

 やはり運動なのか…!?
 運動の秋でダイエットすべきなのかな。でも雲は薄いのに日差しは強いから昼中の運動は肌の敵。夕方はすぐ日が暮れてしまう。

「そして朝は寒くてやる気起きないの……」

「冷えるならオレの側に居ればいい」
「あ、それはもっと嫌」
「貴様…」


 ちなみに、わたしの任務怠慢に怒った扉間と地獄の鬼ごっこを繰り返し運動の秋を楽しんだのであった。
 飛雷神は反則だと思います。


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