最近、マダラがわたしを殺しにかかってくる。本人にその気は毛頭ないのだろうけど、此方からすればフラグ乱立しまくっているのだ。
先日の戦だって、何度も刀を交わした相手にやっと大きな一撃を与えることができ、少しだけ安堵したところで「やったか、ナマエ!?」と遠くのほうからマダラの声がした。マダラは柱間と交戦中のはずなのに此方に意識を向け、やったか、と声をかけたのだ。やったか禁止。案の定、殺れてなく不意に聞こえたマダラの声にすきができて向こうの反撃をモロにくらった。もう一度言う、やったか禁止。殺れたか確認する前に追い撃ちすべきだ。
マダラのことは好きだ。今まで生き延びてこられたのはマダラの側に居たくて修行した成果だと思うぐらい好きだ。
しかし、このような死亡フラグを沢山建築するのは勘弁してほしい。一瞬のすきも許さない激戦中に声をかけられることがしばしばあった。心配してくれてるのだろうけど、切実にやめてほしい。
今日なんて、ほら。
「ナマエ……次の戦で生き延びたら、オレと…」
豪火球、いいや豪火滅失直撃級のフラグを立てたのだ。人生最大の告白、もとい死亡フラグだ。
「…結婚してほ」
「あー!マダラ愛してるから黙ってー!」
先日の戦の傷が癒えぬ身に、そんな浮き足立つ話をしたら次の戦で生き延びられる自信がない。
わたしだってマダラが大好きで心配で愛して結婚したい。長年の恋慕が叶ったら、絶対に次の戦で死ねる。浮き足立つどころが意識がふわふわきゃっきゃっウフフしたまま死んでしまう!油断やすきがうまれるなんて話じゃない!
次の戦は慎重に挑みたい。先日の一件で、わたしに何かあるとマダラにもすきが出来ると解った扉間がわたしをチラチラ見てくるのだ。イズナが押さえてくれるから大丈夫だけれど、あんの卑劣極まりない陰険野郎が何仕出かすが恐ろしい。わたしの実力じゃ奴に敵わない。
何も言わせまい。マダラの口元を押さえつける。
「マダラ!あのね、いつか結婚してあげるから今は待って…」
心配してくれるマダラに、心理面での死亡フラグとやらの話は通じない。願掛けしたりするマダラなら詳しく話したらわかってくれるとは思うけど。面倒な性格であるマダラに一から十まで話したら、わたしが負った傷に自責を感じてしまうだろう。マダラに余計な心配をかけたくない。
なのにマダラときたら、写輪眼でわたしの動きを見切って、邪魔はさせんと口元を押さえた腕を拘束しにかかる。
「お前は戦の度に傷が増えていく…早くオレと夫婦になッ」
「だから待って!夫婦になったら毎日いなり寿司つくってあげるから!」
掴まれた腕を捻って逃れる。
腕相撲のように取っ組み合いになりかける。このまま告白する雰囲気じゃなくなればマダラは諦めてくれ…なくて、意地になってる。どうしよう。
「待てん!」
「愛しているから、結婚は待って!」
「断る!次の戦が終わり次第、戦の請け負いを一旦断り、婚儀の準備を進め…」
「予定変更」
「させん」
腕の取っ組み合いから、脚まで使いだし、もはや修行と同じ組手になっている。マダラにいたっては目が本気だ。本気と書いて万華鏡と読む。
組手でマダラに勝てるはずがない。こうなれば逃げるが勝ち、なのかな。
「逃がすか…ナマエ!」
「追ってこないで!」
「イズナァ!隠れてないでお前も手伝え」
えっ、イズナも居たの?
チャクラを感知に変える暇なく、急に現れたイズナに羽交い締めされる。イズナめ…隠れて兄の告白現場を観賞するつもりだったな。登場の早さから、かなり近くで観ていたのだろう。なんて弟だ。
ばつが悪そうに笑いながら「はい、兄さん」なんて羽交い締めのままわたしをマダラに差し出す。マダラは深く深呼吸して、再度わたしの顔を向く。真剣な表情に心臓がうるさい。好き、かっこいい。
顔を背けても片手で顎を掴まれてで固定され、マダラと向かい合わせにさせられる。このイケメンめ!こういう仕草もかっこいい。本当にかっこいい、愛してる。
このまま告白したら、マダラは弟とも向かい合わせになるけどいいのだろうか。仲いいからいいのかな。
形の整った唇がゆっくり動く。もう目が離せない。
「ナマエ、オレと――」
死んでもいいぐらい幸せだからやめてほしい。
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