「お前しかいない…オレと結婚してくれ」

 良家の長男と次男にプロポーズされた。双方、なかなかの男前であり高スペックな青年である。もし、わたしと同じ年齢の女性ならば、このシチュエーションに心ときめかせその立場を羨ましく思うであろう。わたしも、彼らと同じ結婚や将来の家庭を意識し始める年齢だ。男性諸君はまだちと早いが、善は急げと言う。女の武器は若さ。このような戦、就活しかり婚活しかり、早い者勝ちである。早く決めたほうが、選択肢も広くて良い。

 そして現在提示された選択肢は二種類。双方、顔よし収入よし家柄よし、だけれど性格が……ああ。察してほしい。

 大戦を引き起こし世界規模でとんでもない事をしようとした男と、とんでもない術を開発しそれでその大戦がより大変なことになった原因の男だ。うちはマダラと、千手扉間である。ちなみに二人は犬猿の仲だ。扉間の兄かわたしが、間に入らなくてはまともに会話も出来ない。放っておくとリアルファイトが勃発しそうなぐらい仲が悪い。法で守られた世界なので一応は大丈夫だけれども。

「ナマエはオレと結婚する。貴様はあの頭の軽い女と付き合っていただろう。身を引け、扉間」
「付き合っとらんわ。向こうが勝手に…もうその話は終わったはずだ。マダラとナマエは相性が悪い。貴様が諦めろ、前世でわかったはずだ」
「………オレは一応、ナマエの夫であったが。呆けたが扉間」
「あれを夫婦と呼ぶのか。マダラの方こそ呆けているだろう」
「戸籍上は夫婦だ」

「ちげーよ籍入れする前にアンタ里抜けただろうが」

 可愛いヒロイン様なら、わたしのために争わないで!的なことを涙を流しながら言えたのか。そしてこの男達が殴り合い、友情が生まれ最終的には、お前ならコイツをまかせられる……みたいな。ねーな、ねーよ。ありえないよ。コイツらに限ってありえないわ。殴り合いが普通に殺し合いになる。友情に発展しない憎悪しかない。

 そもそも、わたしは可愛いヒロインと違う。今は男を必要としないキャリアウーマンだ。結婚なんてまだまだ先のことか、縁の無いことだと思っている。
 前世にいたっては、なんちゃって忍世界で婚約していた男が失踪し里に居づらくなり奴を捜す長期任務と装い捜索の旅に出たらソイツが里襲って来やがったので余計に里に居づらくなり結局里に帰ることはなかった忍者だ。てめェーのせいだよマダラ……。更には後に蘇ってひと悶着あった。なかなかどうしてハードな人生を送ったものだ。

「正直な話、もうアンタらとは関わり合いたくない」

 此方は平凡に細やかな幸せを噛み締めて生きていきたいんだッ!

「お前も…オレを捨てるのか」
「前世で捨てたのはアンタでしょうが!関わり合いたくないけど、そういうのがうざいから!仕方なく友達やってんだよ!……面倒なんだよマダラの性格…」
「だからマダラではなくオレが」
「合理主義の塊で死体爆弾作った人間も嫌だわ。普通のロマンスが欲しいのよロマンチックなところが欲しいのよ…コスパ厨め……」

 だいたいコイツら、結婚願望の理由が酷い。弟に、兄者に、今世ぐらいは結婚したらと言われたから、だ。自らが嫁さん欲しいのではなく、兄弟に言われたから適当に前世でも腐れ縁だった手頃で付き合いやすそうな奴を奪い合っているだけなんだ。前世の因縁なのにロマンの欠片もない三角関係である。

 わたしだって、本当は恋人や夫が欲しい。彼氏居ない歴年齢に、前世で生きた年数が加算されているんだよ。強がってキャリアウーマンやっているけれど、本当は人肌や愛情が恋しい。家族愛や友情かっこ笑にプラスアルファが欲しい!

「爽やかな包容力のある男を求めて婚活をしようかな…」
「婚活なんかせずともオレが」
「だから嫌なんだって!マダラも一回ぐらいはわたし達以外の人とつるんでみなさいよ。扉間を見習えって」

「だからその話はよせ……もう終わった話だ…」

「どのように終わったのだ。詳しく話さんとわからんぞ?ん?どうした扉間」
「話振ったわたしが言うのもなんだけど。マダラ、人の傷口広げないであげて…」
「あの二代目にも傷があるのか、ほぉ…なるほどな」
「マダラ…」

 珍しく人前で項垂れる扉間と、それを面白く見守るマダラ。扉間が復活したときファイトしそうなので早々退席したい。
 何十年と忍として生きた人間が、その記憶があり、ニューゲームしたところで本質は変わらない。一般人と演じられても付き合うところまでは上手くいかない。扉間は相手が悪かったのだ…詳しくは触れないでほしい。

 わたしも、この年になって恋人がいない。何故かどこかで否定され、否定する自分がいる。忍として生きた人間は、一般人の幸せを手に入れられないのか?否!

「よし!独り寂しく五輪をテレビ観戦しないように!お互い、頑張ろう!」


 容姿は良い男二人が「実家で家族と観戦か…」と虚しく呟いた。コイツら、もう既に試合終了させ諦めているぞ。
 虚しくはあるが、少し心浮き立つ楽しみが滲み出ている。家族好きすぎるでしょう。絶対楽しむ気だ。ブラコンどもめ。ボッチ観戦はわたしだけかよ、ちくしょう……。


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