忍と言っても女を捨てた訳ではない。寧ろ、くの一として女は磨いていると言ってもいい。里が創設され漸く訪れた平和に、今まで我慢というか抑えていた女の子らしさが戻ってくる。つまり、最近は専ら甘味や服、恋愛の話で盛り上がってしまうのだ。
 今回の飲み会も桃華さんと色々と話し合った。と言っても、クールビューティー桃華さんはわたしの一方的な話に同調してくれるだけ。やだあ、聞き上手なイケメン!そんな桃華さんが珍しく自ら話題を振った。

「そういえば、ナマエは里が出来たら結婚したいとか言ってなかったか?」

 任務の後って甘いものが欲しくなるよねからの婚活の話題。少し飛雷神でぶっとんているけれど、結婚願望は言ったような気がする。

「えっ、あー願い事といいますか、願掛けみたいなものですよ。それ」
「それで今はどうなんだ」
「こ、恋人すらいないわたしに!」

 修行、修行、戦に修行、合間に町で菓子を買いだめのわたしに恋人なんていない。結婚願望もあるけれど、まず相手がいないのだ。さすが柱間様の側近だ、人の痛いところを確実に刺す。わざとらしく両手で顔を覆うと、桃華さんは背中を撫で慰めてくれた。もうっイケメン過ぎます、もし桃華さんが男性だったら完全に惚れていますよ。二年ぐらい前から。

「まずはそこからか…ナマエ、好みのタイプとかあるか?」
「んー、タイプですか。ってわたしのタイプなんて知っても」
「まあ言ってみるだけだ。理想像でもいいぞ」

 桃華さんは「ちゃんと需要もある」と言ったような気もしたけれど酔いが少しまわってそこまで頭がいかない。
 好き、理想。確かに憧れる像というものはあるけれど、わたしはきっと真逆なタイプと結婚するだろう。強くてかっこよくて優しい、が理想像だ。しかし、実際は忍の自分は一人で生きていけるので安心感とかより母性本能がくすぐられる人と結婚しそうなのだ。わたしが守ってあげるわダーリン!強くて素敵なハニーだぜ!みたいな。

「強くてかっこよくて優しい人です、理想像は」
「……扉間なんてどうだ。合ってるだろう」
「えっ」

 なんてピンポイントな。確かに扉間様は強くてかっこよくて、優しいかは微妙だけれど。いや苦戦しているとき助けてくれるから優しい方だろう。少し離れたところで柱間様と飲んでいる扉間様を見る。目が一瞬合ったような気がした。うん、イケメンである。

 しかし、酔いの回ったわたしの頭は結婚相手を想像してしまった。安心感より母性本能がくすぐられる人。わたしが守ってあげるわダーリン!と扉間様の前に立ち、家事も多くやってあげて、相手が失敗してもしょうがないわねと許し、甘えてきたり。強くて、素敵な、ハニー…腹筋が死にそうになった。

「っ……あははっ!ないですって、ナイナイ!ふふっ扉間、様と!?あっりえなーい!あははっ」
「…ナマエ、その」
「あー想像したらお腹痛くなりました!桃華さんって稀に面白いこといいますよね。うけるー」

 何故か先ほどのわたしのように両手で顔を覆って項垂れてる桃華さんをつつく。面白い冗談言うたちじゃないけど、大丈夫ですよ桃華さん!巷で噂のぎゃっぷ萌えとやらです!

 ナマエ、空気読め。
 隣の同僚に小声で言われたけれども何の空気かわからず。面白い脳内再生は止まらず。笑いが止まらない、そのときに。ドンッ。とテーブルにグラスを叩きつけた音がした。わたしを含め皆一斉にびくりと肩を驚かせ、音のした方角を恐る恐る見る。扉間様の、チャクラが荒立っていた。
 わたし、凄く失礼なこと言ってましたよね。扉間様マジありえねえ発言とか、事情しらない相手からしてみれば急に否定されたことになる。なんと無礼な。

「扉間、心境はわかるがチャクラが荒立だっているぞ」
「黙れ」



「ととと桃華さん、わたし扉間様の席に行って謝ったほうがいいでしょうかっ!?扉間様がありえないんじゃなくて結婚相手がありえない的な話だったんです、ってきちんと伝えないと!」
「……もう何も言わないほうがいい」

 止まらなかった笑いが一瞬で失せた。


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