誘われた合同コンパなるものに参加した。彼氏がほしいとかそういうことじゃなく、友人との付き合いで参加した。前世で忍だったわたしはチャラチャラ着飾っている男性があまり好きではない。このままではいき遅れそうだけれど、最近はそれでもいいような気がしてきた。

「ナマエ、大丈夫よ!今回の相手は木ノ葉大学の院生だから」
「木ノ葉大学……」

 ああ、あの大学ね。なんの因縁か前世でわたしのいた忍里の名前の大学が存在する。当然、名前に惹かれてオープンキャンパスにいったことがあったけれども普通の大学だった。忍術の一つでも教えてくれるわけでもない、生徒は皆さん世の大学生と同じ。戦争経験者なんていない。さらには名門木ノ葉学園からの一貫の生徒もいて、彼らはお受験戦争にすら参加したことがない。まあ、エリート様達である。

 絶対、わたしなんかとウマがあわない。この世の男共は皆、軟弱過ぎる。と、思ってた時期がわたしにもありました。

「初代様………?」
「えっ」
「柱間…この女お前のこと」
「うちはマダラ!?」

 初代様二代目様そしてあのうちはマダラが合コンにやってくるなど、予想外だった。

どうしてこうなった

 場違いにも程がある。正面には初代火影様と二代目様、そして隣にはあのうちはマダラがいらっしゃる。この堂々たるメンバーの中で、忍連合軍その他大勢の一人であったわたしが、たいした戦果もあげられぬ忍が混じっている。明らかに浮いている。浮きすぎで一人だけ月まで届きそうな勢いだ……。

 数十分前まで、この世の男は軟弱ぅ!とかほざいていた自分を八つ裂きにしたい。最強メンバーに囲まれて、合コンから拉致されるだなんて知っていたら参加などしなかったのに。携帯の画面に浮かぶ文字で、友人は容姿の整った男三人に連れていかれたわたしを羨ましがっていた。代われるものなら、代わってやるさ。寧ろ誰でもいいから代わってくれ。ください。

「で、ナマエと言ったな。おぬしはいつ思い出した?」
「…小学生の頃、落ちそうになったとき」
「マダラと同じか」
「いや、オレは木から落ちた時だ」
「そうだったか?」

 うちはマダラが相槌をうった。
 わたしは小学生の頃、自然教室で道を間違え崖から落ちそうになった。高さは教室の三階ぐらいだったと思う。咄嗟の出来事に頭でどうこう考える前に、身体が動いた。気がついたら崖に垂直でしゃがんで、程よい高さの木に跳び移り何事もなかったかのように着地していた。目撃者がいなかったのが最大の安堵。その後は熱を出してよく覚えていないけれど、"忍だった頃"を思い出した。

「それで、ナマエはあの大戦に参加していたのか。何処の忍里に?いや、それよりあの大戦後が知りたいぞ!」
「落ち着け兄者。そう一度に質問しても相手が惑うだけだ」
「……すまん。では簡単な自己紹介…待て忍が易々と名乗ってはいかんな。どうしようか」
「今は忍ではないだろう」
「そうだったな!ガハハ!」

 なんだこの人達。大戦では登場したときこれ程頼もしい味方は居るまいと思ったのに。いや、漫才繰り広げるお方でも火影様たち相手にモブ・オブ・ザ・モブのわたしが自己紹介なんて…。隣のうちはマダラが気にするなと言わんばかりに「オレはあの大戦を起こした本人だぞ」と薄く笑いながら言った。うん、そうだね。綱手様はじめ一人で五影ぼっこぼこにしたお方ですね。そして冒頭に戻る、わたし物凄く場違い。

「わたしは、木の葉の忍で」
「おお!オレらの里ぞ!」
「精密な術が得意でした」
「幻術や医療忍術か?」
「幻術はあまり…医療忍術は一応医療部隊に配置される程度には出来ました」

 まあ、最終決戦には医療部隊も前線に立ち後半ずっとチャクラ切れだったのですが。強敵を相手していたあなたたちとその強敵本人とは無縁の立場だ。

「大戦後は…詳しく知りません。戦後は小国を中心に混乱がおこり、わたしは任務で調査しに行った紛争に巻き込まれ亡くなったので」
「……そうだったか」

 重苦しい雰囲気が漂う。そんな暗い顔しないでくださいよ。初代様が知りたいって言ったから話したんだぞ何かフォローしてください。二代目様とうちはマダラは、まあそうなるだろうなと慣れたご様子。大戦後の社会を知っているのだろう。
 あの第四次忍界大戦は国と国同士の大戦とは違って、五大国を巻き込み莫大な被害を出したのに敗戦国が無く賠償金や条約による戦後処理や統治がない。国力回復のため食糧はもちろん医療具の買い占めまでおこり、小国は混乱。わたしはその後、紛争に巻き込まれて死んじゃったけれども。

 きっとあの大戦で活躍した英雄達がなんとかしてくれたのだろう。たぶん、平和になっていると思う。少なくとも五大国が睨み合うことはない。戦争中は忍里関係なく治療したり庇い合ったりしたのだから。

 容姿が整っている男性三人に囲まれているのに、気分は晴れない。その後の質問もたいした受け答えが出来ず。「三度目の大戦で親亡くなったんです」「一族同士の戦から大国同士の戦争か…里を興しても何も変わらんかったな」「この世界すごく平和ですね」「いやこの国が平和なだけだろう」「兵器の戦いのほうが悲惨だよな」そんな話展開してしまった。開き直ってるうちはマダラを除いて、火影様たちは地雷踏み続けた気まずさがあった。

 前世とのギャップを再び突きつけられ、我々の存在こそが場違いじゃねとの結論に至り解散。申し訳程度に注文した飲み物と食事はほとんど食べることが出来なかった。奢っていただいたので更に申し訳ない。

 そしてゲットした火影様達のアドレス。誰がわたしなんかと最強の忍達がメル友になろうと予想しただろうか。まあ、一応連絡先を交換しただけで友はないけど。火影様に報告書ではなくデコメやLINEのスタンプを送るとか考えられない。了解しましたの言葉の代わりにグーサインのスタンプを送るってか?ねーよ。畏れ多いわ。
 なんてことを考えながら駅まで無心に歩き続けた。初代様方とは方向が真逆だったのでお店前で別れたけれど、不幸なことにあのうちはマダラとは住居が同じ方角なのだ。視界に入る男女二人組は仲良く会話しながら歩いておいでなのに……我々の雰囲気ときたら、まあ、うん。ロマンスなど求めるな。片や大戦を起こした戦犯ですよ。早く別れたい。

「では、わたし南口ですので」
「送っていく」

 勘弁してください。

「そんな…お食事奢ってもらったのに悪いですよ」
「大して食べていなかっただろ」

 はい。だってあの雰囲気がねえ。そんな雰囲気にさせたのは半分ぐらいわたしの責任なんですが。とてつもない面子に喉が怯え食べられなかったというのもある。家に帰って簡単な自炊か、帰り途中のコンビニで何か買って帰るかと考えていたのに。

「二軒目行くか?」
「えっ」
「口直しに一緒に食事でもどうだ」

 思考回路が一瞬止まる。
 あのとき、初めての戦争に絶対的な敵に、逃げたくても逃げられず戦ったわたしがこんなことになるなんて。あの、あのうちはマダラにお食事を誘われるだなんて、誰が想像できようか。
 でも、別に戦争じゃないし逃げていいよね。っていうかなんでこの人こんなに積極的なの?あのうちはマダラでしょう。肩に手を乗っけないでください。なに手を握って…。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -