めんどくせえ。非常にめんどくさい。よく同じ講義を受けてるポニーテール男の口癖が脳裏に浮かんだ。
 昼休みは電話しろ、学校が終わったら連絡しろ、駅に着いたら連絡しろ、帰宅したら連絡しろ、会いにいく。本日の午後だけでこれだ。用事があったり誕生日などの記念日でもない日常で、しかも相手は社会人…なのかはわからないけれど、こんなに連絡し合っていたら少し鬱陶しい過ぎやしないか。ただでさえ毎日必ず会っているのに。もちろん、同棲などはしていない。マダラさんが毎晩通い妻のように来るだけだ。此処まで愛されていると感心や喜びを通り越して、めんどくさい。

「いつもより一時間遅い。何をしていた」
「一時間って……」
「ナマエ」
「……少し教室で、友達と話していて」
「携帯使えば家で済むだろう。次からはそんなくだらない理由で遅れるな」

 玄関を開けたら不機嫌なマダラ様がいらっしゃいました。小学生じゃないのだから一時間帰宅がずれたところでなんだ。通学には電車を使うし寄り道だってして当たり前の年齢。以前は帰りにバイト先にそのまま寄ることだってあった……この男にバイトやめさせられたけれど。
 当たり前のようにわたしの家に居るが、違和感しか感じない。わたしが滞在している一人暮らしの1LDKと違い、一等地のお高そうなマンションに正月に無理矢理連れていかれた日本屋敷がこの人の住む場所のはず。思わずただいまっていいそうになったよ。

「マダラさんにそんなこと言われる筋合いないよ」
「オレはお前を心配して言ったんだ」
「心配って……それに休日はいっつも、マダラさんと一緒なんだから友達と話すぐらいいいじゃない」
「一時間も話す必要はない。長引くなら家で電話でろしろ」
「ああ!このわからず屋!」

 女の子ってのは一度話し出すと話が展開に展開を重ねて終わることがない。一時間ぐらいあっという間に経ってしまう。話を切り上げたのだって友人が課題提出時間の期限がそろそろやばくなったからだ。会話なんてかってに長引くのに、たったの一時間!いつもより帰りが遅いってだけで!
 世の中ではメンヘラなる属性が流行っている?ようだが、この男はそれに近いのか、それともわたしを単に子供扱いしているだけなのか知らない。空襲を受けていたり災害時なら小まめに連絡するってのもわかるけれど、心配されるような環境に陥ってなにのに色々と過剰だ。

「家で電話するなら、なおのこと教室で話せばいいじゃない!一時間遅れたからってそんなに怒らないでよ!」
「怒っているのはナマエの方だ」
「………返しにくいように言うのやめてよ」

 起こってはいないがイラっとしている。冷静なマダラさんと比べて年の差以上に自分が子供っぽく思えた。ちょっとショック。
 とりあえず、部屋に行こう。玄関先で大声をあげては近隣や通路を歩く人に聞こえてしまう。鍵をいつもの場所に置いて、そっと胸を撫で下ろして落ち着かせる。気分は静まってもイライラは収まらず、廊下を塞ぐようにいるマダラさんが邪魔で払い除けた。それがいけなかったのだろう。マダラさんはリビングに行こうとしたわたしの腕を強く掴んだ。

「なんだその態度は」
「痛い痛い!マダラさんこそなんなのよ!」

 腕の骨がギシギシと軋む。力強いマダラさんにとっては、恋人の腕を折る気なんてないと思うが、こちとらか弱い女の子なので腕か折れるんじゃないかってぐらい痛い。…まさか本当に折る気ないよね。

「えっ、マジ痛い!マダラさん、腕痛い、折れる!」
「…脆いな」
「脆って……ああ痛かったー。暴力反対です」
「柱間はこれぐらい何ともなかったんだがな」
「長身男と比べないでもらえます?」

 腕痛いわ、あの能天気長身長髪と比べられるわで謝っても許す気にはならない。でもプライドがヒマラヤ山脈超え大気圏外並の高さのマダラさんが人に謝るなんて器用な真似はできないので此方が折れるしかない。腕が折れるよりいいか。それぐらいの心を持たなくては。
 世の彼女たちは「謝って!」と可愛く言うのだろうか。この唯我独尊彼氏と付き合い周りと合わせることをやめたわたしはどうでもよく感じ、マダラさんをリビングに入れソファに座らせる。もともとわたし一人が快適にゲームが出来ることしか考えてないソファなので、二人で座ると少しキツい。マダラさんと目線が同じぐらいになる。

「………とりあえず、遅れたのに連絡しなかったのは謝ります」
「連絡はいい、今後一切遅れるな」
「ちょっとそれは無理かな」
「何故だ」
「人のつき合いかあるから」
「オレを最優先しろ」
「めんどくさい彼女か!?」

 ワタシが誰より一番ってか?可愛い鬼娘ちゃんならともかく、成人済みのいい年の男がやってもキツいっスよ。わたし的には的確な突っ込みに対してぎろりと睨んだマダラさんは、柱間さんが賭事で有り金溶かしたみたいなぐらい深刻そうに頭を抱えた。急にどうしたんですか。

「お前も、オレを面倒だと言うのか」
「"も"ってことは、誰かに言われたんですか?」
「柱間が…いや、柱間は繊細だといったが扉間の奴が……チッ」
「ああもう。語って嫌な気分になるなら何も言わなくていいですよう」
「ナマエも、オレを面倒だと言いオレを独りにするのか」

 独りにする。つまり、別れるってことか。
 確かに今回のようなことが重なるとフリーだったときが懐かしく感じる時もある。でも嫌いになったとかじゃなくて、面倒だから別れるってことはない。繊細すぎて鬱陶しくもある彼の人格も含めて好きなのだ。最も好きなのは容姿だけれども。イケメン大正義です、はい。
 マダラさんとなにかしら因縁がある千手兄弟諸君がなにをやからしたのかは知らないけれど、わたしはマダラさんが好きってことは変わらない。マダラさん以上の財力と家柄を持つ好みのイケメンがナマエ様を永遠に愛します!とか言わなければ…まあ、そんな少女漫画もビックリな展開はマダラさんと恋人になった時点で色々と使い果たした。

「よくよく考えてみれば、マダラさんがめんどうくさいのって今に始まったことじゃないし……」
「おい」
「ぶっちゃけ以前付き合ってた浮気野郎と比べたら全然マシって」
「男がいたのか!?」
「…マダラさんと出会う前ですよ」
「詳しく話せ」
「でも昔のことだから関係な」
「話せ」


 後日、昨夜一日中マダラさんに質問攻めされ卒業アルバムを見られたりして体力が消耗しきった状態で授業を受けるはめになった。
 その数日後に色々と納得できた、というか腑に落ちたというか諦めたというか…そんな出来事があった。

「サスケ君ってさ、家族でしかLINEしない宣言してるのにいつも携帯弄ってるよね。ゲームしてるの?」
「…ナマエか」
「何のゲーム?やっぱりパズル系?」
「ゲームじゃない、イタチが連絡しろって…」
「うちはイタチさん?」
「オレの兄さん過保護なんだよ。忍者に命狙われてるわけでもねェのに、一々連絡いれねーと家族が五月蝿い」

 サスケ君は一時期グレて大蛇丸とかいうオカマ野郎のところに家出したことがあったからなんだけれど。お家柄かと納得できた。あ、マダラさんから電話きた。


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