「だあああ!そんなの知らないよ!知らなくていいでしょう!」

 兄者に書類を持っていこうとしたら廊下でナマエが大声を上げ壁を指でつついていた。拳でないのがあやつ最大の良心なのだろうが、残念なことに無意識にチャクラを放出して壁のヒビが広がっている。修理費は給料から差し引こう。

「どうしたんだナマエ?急に大声をあげて…」
「うわ扉間だ………聞いてよ扉間ァ!忍者アカデミーに見学にいったのよ!」
「そういえばナマエは午前中は仕事入ってなかったな…」
「そう!昼まで寝ているのも時間の無駄遣いかなと思って里回りしていたの」

 オレを見て一瞬だけ嫌そうな顔をしたナマエは、情けない表情に変わり愚痴を言い出した。生憎オレも時間の無駄遣いはしたくないので歩きながら、ナマエは着いてきて隣で騒ぐ。
 なんでも、アカデミーでくの一の華道の時間を見学していたら花言葉について話を振られ一つも答えられなかったらしい。物悲しそうな生徒たちと苦笑いの教師に挟まれた、と。

「花言葉なんて知らないよ!こっちは数年前まで野花踏みながら戦場走り回っていたんだよ!?真っ赤な花咲かせまくってたよ!」
「今の時代、くの一の在り方も変わっておるからな……時間は余っているならナマエも学んだらどうだ?」
「学ぶって簡単に言わないでよ…あいつら一つの花にいくつも存在してんのよ。花言葉め」
「そう目の敵にするな」
「だいたい花言葉ってなにさ!誰が決めたの?どうせ種の発見者じゃあないんでしょう。誰よ。柱間の木遁分身みたいに人間が生えてきて『わたしの花言葉は愛情デース』とか言ったの?言ってないでしょう!」

 可笑しなことを言い出しはじめ、その温度のまま兄者の居る部屋に入った。書類を持ってるオレのために扉を抑えていてくれるところよりも、別のところで気を効かせてほしい。増える未処理の書類に額を机にくっつけた兄者にくだらない論争を展開させないでくれ。

「楽しそうに二人で来て……書類を課すなんて、酷いぞ…」
「楽しくないです!…柱間さぁん、火影宣言で花言葉を一つに統一してくれませんかぁ」
「何ぞ?急に」
「耳を貸すな兄者、ナマエは一つの花に幾多の言葉があるのが面倒なだけだ。くの一としての自覚を捨てるつもりだ」
「一応、捨ててはないよ!」
「それはよかった、午後からの護衛任務はくの一らしく対応しろ。くれぐれもこの間のように常時殺気を放ち、逆に護衛相手を怯えさせることはやめてくれ」
「了解です」

 ナマエは任務依頼の書類を受けとり、兄者が放置していた筆記具を使い記入した。必要事項を記入しながら、話が読めない兄者に花言葉の由来を聞いていた。なんとなく流れが読めたのか、それとも純粋に聞かれたことを答えるだけなのか、兄者は丁寧に教えた。

 どうやら花言葉とは植物は神からの言葉だと信じられていた時代や、神話になぞられたりしているらしい。言葉がいくつも存在するのは地域によって違っていたものが合わさって伝えられたからだ。この道に関しては下手なくの一より兄者のほうが詳しいと思った。
 しかし、質問した当の本人のナマエは途中から聞いておらず、オレに「この任務終わったらくの一修行で扉間の弟子借りるね!」と言い残し颯爽と部屋を出た。その無作法さから、しおらしいくの一は無理だとわかる。

「扉間の弟子…コハルか?一体何をするつもりぞ…気になる」
「気になるな。いいから兄者は書類に印を押せ」
「扉間……」
「此方の書状は署名も必要だからな」

 久しぶりに庭や盆栽の手入れをして癒されたいと兄者が呟いた。ナマエには到底理解出来ない心境だろう。


 後日、挙動不審のダンゾウが重たい口を動かしながらオレに報告した。

「ナマエさんが……くの一として女らしさを研く修行とか言いながら、その、ヒルゼンと女湯を覗きしてます」

 深刻そうに話す内容に色々とつっこみを入れたい。が、どこからつっこめばいいのかわからん。何故そのような修行方法になったのか、ナマエは女なのに女湯を覗くのか。


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