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キリサキ島に上陸すると、黒服の男たちに囲まれた。そして囲まれたまま進む。
あたしたち何で囲まれてるの?わからないよ、団探偵学園!それにこの人たち、なんか、ちょっと…
「ちょっと、引っ張らないでよ!」
「だってこの人たち相当怖いんだもん」
『キュウ、弱虫ー!』
そうキュウに言いつつも、あたしはメグと手をつなごうとする。だってやっぱり怖いんだよ。あの人たち。
「ナマエだってメグと手つないでるじゃん!」
「ナマエはいいの!」
『メグ、言っちゃえー!……ん、お?』
少し歩くと黒服の男たちは、あたしたちの前に立って並んだ。
「これより、団守彦学園長を紹介する」
「え…団先生が来てるんですか」
「あたし顔見るの初めて」
「僕も。だって滅多に人前に現れない伝説の人だよ」
「ナマエは?」
『あたしは…まぁ、うん』
いきなりのメグからの質問に、曖昧に答えた。嬉しそうなキュウとメグにあの話をするのもあれだし、まだ黙っておこうと思う。
黒服の男たちが横に退くと、車椅子に乗った男の人が現れた。そして車椅子を押され、あたしたちに近づいた。そう、あの人が…
「団守彦だ。諸君、第一第二試験ご苦労だった。この島での最終試験に合格した者には、私の全てを教える」
『…全て…』
「Qualified class、通称Qクラスの入学を許可する」
「資格を与えられし者たち、Qualified」
「Qクラス…」
『…合格枠…は…?』
ぼそっとつぶやけば、団先生に聞こえてしまったらしくあたしを見つめた。
「本当の試験はここからはじまる。合格者の枠は……5人だ」
あたしを見つめたまま、そらすことなく団先生が言った。あたしに何かを訴えかけるように。
「5人!?」
「この中から…5人…」
「検討を祈る」
そう言い残し、団先生は行ってしまった。
『…団先生…』
その後団先生の行ってしまった方をずっと見ているあたしたちを、残っていた黒服の男たちが今日泊まる建物へと案内してくれた。また囲まれてだけど。案内されたのは古めの建物だった。
「きたねぇなぁ。大丈夫かよ、これ」
文句を言いながら奧の部屋に入っていく三郎丸さんと、キョロキョロして入っていくキンタさん。あの2人同じ部屋なんだ。ケンカしないといいけど…。
『ねぇ、メグ』
「何?」
『あのさ、もしかしてあたしたち2人かな』
「…多分」
『あたし怖いのとかムリなんだけど…』
「……あたしも…!」
『!絶対近くで寝ようね!むしろ同じ布団で寝よ!』
「うん!」
そんな話をしながら、キンタさんたちの部屋の隣の部屋に入った。
良かった!1人じゃなくて!1人だと絶対寝れないもん。昼間明るいから平気だけどさー。今のうちに色々見てこようかな。
『メグ、あたしちょっとこの建物の中見てくるね』
「はーい、いってらっしゃい」
メグに一言言って、建物内をぶらぶらすることにした。
少し見て回ると階段から降りてくるリュウと会った。
『あ、リュウ!』
「…」
『どこ行くの?』
「買い物」
『買い物…この辺りにお店あるのかな』
「探してみる」
『何か忘れ物でもしたの?』
「うん」
『あたしが貸せるものなら貸そうか?』
「……………いい」
『そっか、じゃあいってらっしゃい!』
階段を降りて行くリュウに手を降った。まぁ当たり前の如く振り返してはくれなかったけどね!
「忘れちったよ、売ってんのかな」
『今度はキュウ?』
「あれ、ナマエ。何してんの?」
『たーんけーん。キュウも忘れ物みたいだね』
「うん、あれがないとちょっと…」
『あたしが貸せるものじゃ…』
「ない!」
『…』
「絶対ない!てかムリ!」
『そんなに言わなくても…』
( パンツ忘れたなんて )
( 言えるわけない )