□第18.5話
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ある日の朝、真選組の会議室にて、局長、副長、各隊の隊長たちが集まり、奏は部屋の入り口付近に正座していた。任務の報告をするためである。
彼女は報告の際、必ず彼らの顔を一度見渡すのが癖であった。全員にちゃんと話を聞いてもらわないと報告の意味がない。故に、彼らがちゃんと自分の話を聞く姿勢であるかどうかを確認するのである。

そして、いつものように彼女は上司たちの顔を見渡した。誰も声を発していないために、部屋の中はしんとしている。そのせいで、彼らのグズグズと鼻を鳴らす音が余計に大きく聞こえた。
理由はわかっているので、彼女はそのことには触れずに口を開く。


「では、調査結果を報告します。最近「ぶぇっくしょい!!……す、すまん、奏ちゃん。続けてくれ」


盛大なくしゃみをして彼女の報告を遮った原田は、一言謝罪するとズズッと鼻を啜って、続きを促す。奏も特に気にした様子はなく、コクリと頷いて続けた。


「……最近、江戸で多発している「はっくしょん!!」……ビックリするぐらい典型的なくしゃみだね、総悟」


次にくしゃみをした沖田に向けて、奏は言う。沖田も小さく鼻を啜った。


「すいやせん、師匠。さっきから鼻がムズムズして仕方ねェや。気にしねェで続けてくだせェ」

「…じゃあ遠慮なく。最近、江戸で多発している花粉症についてですが、スギ花粉でないことは皆さんもご存知のことかと思います」

「ああ。どっかの星の植物らしいな?ったく、性質が悪いったらねェぜ」


そう返したのは土方だった。いつものようにクールに答えてはいるが、彼の顔を見て奏は気の毒そうな表情になっている。


「大丈夫ですか、副長?涙と鼻水で顔面ぐしょぐしょですよ」

「これくらいどうってことねェ」


とは言うものの、土方の目は他の者たちよりも赤く充血しており、しかもそれで目をカッと見開いているものだから正直気味が悪い。


「つーか、なんでお前だけ平気なんだ?」

「私にはむしろ、なぜ皆さんが花粉なんかにやられているのかが不思議なんですが。体調管理がなってないんじゃないですか?」

「体調管理でどうこうなるもんじゃねェだろ、花粉症は。実はお前、馬鹿なんじゃ…」

「馬鹿は風邪をひかないとかいう話をしたいんですか?言っときますけど、馬鹿は風邪をひかないんじゃないんですよ。体調管理もできない上に、風邪をひいてもひいていることに気付かないのが馬鹿なんです。風邪をひく人は、風邪をひいたことには気付くことができるけど体調管理ができていない人。私は自分の体調管理は自分できっちりしているのでどちらにも当てはまりませんよ」


淡々と言った奏に小さく溜息を吐き、土方は話を続けた。


「で、肝心の花粉の大元はわかったのか?」

「はい。かぶき町に最近引っ越してきた天人がいまして、どうやらその天人が持ち込んだ植物が元凶のようです」

「そいつをしょっぴくか」

「いえ。迂闊に手を出さない方が良いかと」

「?なんでだ」


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