□物は大切に使おう
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「あーあ、もう折れちゃった」
隠密部隊での任務後、奏は屯所に帰ってきてから、折れた刀を手にしたままボヤいた。
隠密部隊の彼女の仕事は激務が多い。攘夷浪士の一団をまるまる抹殺してくるようなことも少なくなく、刀への負担はかなり大きかった。
故に、彼女は刀を常に二振り常備している。
普段は、一振りだけを用いて戦い、それがダメになったらもう一振りで戦う。それが、彼女の戦闘スタイルとなりつつあった。
一時期は良い刀なら長く持つのではと考え、業物を買ったこともあったが、それもそうは持たなかった。もちろん安物よりは、長持ちすることに違いはないが。
しかし、値段と使える期間を考えると、やはり安物を買い、それが壊れたら新しいものを買う方が経済的にも無難だった。そして、いくら経費で落とすとは言っても、自分のお金でないのに堂々と買うのも気が引けるというのもある。
だが、壊れる度に毎回毎回買い換えるのは、正直面倒くさい。刀を買うための時間があるなら、仕事に費やしたいのが彼女の正直な意見である。そんな思いが、長持ちする刀探しを未だに彼女に強要しているのだ。
すると、その話を聞いた土方は口を開いた。
「俺の行きつけの鍛冶屋を紹介してやろうか?」
親切心で言った彼に、奏は小さく首を横に振った。
「いえ、いいです。副長の行く鍛冶屋には妖刀が置いてありそうな気がするんで」
「どういう意味だ、コラ」
「ほら、どこぞの海賊剣士も武器屋で妖刀を手に入れちゃってますし。私はそんな危ない橋は渡りません」
「ここで声優ネタ!?」
「なら、俺が紹介する店に行ってみたらどうですかィ、師匠?」
そう言って、話に割り込んだのは沖田だった。
「え、何?総悟、いい鍛冶屋知ってるの?」
「いや、鍛冶屋って訳じゃねェんですがねィ。何でも作ってくれる万屋でさァ」
「却下」
奏は即答した。脳裏に彼女の苦手な天然パーマがよぎったからだ。
「師匠、何か勘違いしてやせんか?万事屋の旦那の方じゃなくて、作る専門の万屋でさァ。『万屋 横堂』って名前なんですがねィ、どうしやす?」
それを聞いた奏は、しばらく目をぱちくりさせた後、ニコッと笑った。
「そのお店、紹介してくれる?総悟」
「任せてくだせェ」
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