□元真選組と攘夷浪士との宴会にて
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公開処刑の後――と言っても結局誰も処刑されなかったが、銀時たちは真選組もとい過激攘夷党『誠組』と桂一派の宴会に招待された。それは、双方の大将である近藤と桂の帰還を祝う為に催されたものだ。しかし、ほんの僅かな時間、顔を見せただけで新八と神楽はすぐに帰ってしまった。

いつもの銀時なら、このおバカメンツと一緒に宴会に参加するなどということはなかっただろうが、今はこの五年後の世界の状況を把握するという義務がある。その為に彼はこの場に留まった。

銀時は座敷内をキョロキョロと見渡す。ここに元真選組の面子が揃っているなら、彼女がいるはずだ。一番話しやすい相手であり、その五年経った姿に興味もある。故に銀時は、彼女を……奏を捜した。しかし、それらしき姿はどこにも見当たらない。

また情報収集か何かの仕事でもしているのだろうか。

そう思い、新八を追って出ていった近藤の空いた席に腰を下ろし、近くに座る土方と沖田に向けて声をかけた。


「おい、奏はどこに行ったんだ?」


すると、酒を呑んでいた二人の表情が一気に強張る。その張り詰めた空気を理解できずにいると、隣に座っている桂が膝の上で拳を固く握りしめるのが視界に映った。
銀時の問いに対する返答もなく、彼の耳には宴会を楽しむ酔っぱらいたちの笑い声だけが嫌に響く。そんな沈黙を破ったのは、土方だった。


「――奏は、死んだ」

「は……?」


一瞬、意味を理解できなかった。

無理もない。ついこの間、会ったばかりの人物が死んだと言われて、ああそうなんだと納得する者は普通いないだろう。
しかし、ここは五年後の世界。奏と会ったついこの間からは、最低でも五年経っているのである。つまり、その間に彼女が死に至る何かがあったということだ。
銀時の頭に真っ先に浮かんだ可能性は、この世界を崩壊させた原因であるナノマシンウイルスだった。


「白詛に…やられたのか?」


土方はすぐには答えず、杯を置いて煙草に火を点けた。その様子は、どう説明すればいいのかを考えているようにも見える。そして、煙草を口に銜えて大きく息を吸った後、溜め息を吐くように紫煙を吐き出した。


「そうだったら、まだ良かったんだけどな」

「……どういう意味だ?」

「言い方が悪かった。あいつは死んだんじゃない。――殺されたんだ」

「!?」


殺された――その言葉に銀時の頭は思考を停止した。しかし、一気に押し寄せる疑問の波が、口から言葉となって溢れ出す。


「殺されたって、アイツが?誰に?どうやって!?」

「……わからねェ。犯人はまだ捕まっていない」

「ンだよ、それ。ちゃんと調べたのかよ?犯人を捜したのかよ!?」

「捜したに決まってんだろーが。あと、奏には悪いと思ったが、検死もさせてもらった」

「――結果は?」

「死因は心臓損傷による出血死。凶器はおそらく、刃物の形状をした何かだ」

「?なんだ、いまいちパッとしねェ結果だな」


そう返した途端、桂がおもむろに立ち上がった。もう聞きたくないとばかりに、彼は座敷の濡れ縁に移動する。
すると、今度は土方が立ち上がり、桂の座っていた席に腰を下ろした。


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