□.5が付けばキャラクターブックになるとは限らない!
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冬の寒空の下、綴は手を温めるためにハアと息を吹きかけ、手と手を擦り合わせる。

隠密部隊にいた頃は、着物か袴かのどちらかで行動していたが、今は真選組に籍を置く身だ。松平の好みに変えられた隊服のせいで、太腿が常に外気にさらされている。
もしかすると、今までで一番つらい冬かもしれない。

そう思いながらも、しかしワーカホリックという自らの性質が、建物に籠って事務仕事をするなど絶対に許さない。何故なら、彼女がアウトドア派だからだ。

……関係ない?あ、そう。

それはともかく、彼女は街に出て、ある調査を行っていた。


狂乱の貴公子――桂小太郎。
攘夷戦争で名を上げたかつての英雄のひとりであるが、今では幕府の転覆を目論む反乱分子でしかない。その男が起こした爆弾事件は数知れず。真選組も、綴が入隊する以前より彼を追いかけているが、捕縛することは叶わなかった。

そんな男がこの街に潜伏している、との情報を得たのだ。
目撃情報の発信者は、真選組一番隊隊長、沖田であるから間違いはないだろう。しかし当の桂は、攘夷志士を騙って強盗に手を染めるチンピラどもをチャーハンで成敗した後、再び姿を消した(そのチンピラ達はもちろん真選組で捕縛し、投獄されている)。

さすが、逃げの小太郎という異名を持つだけのことはある。

というか、異名を少し共通点持たせれば?とは身勝手な管理人の言である。『狂乱の貴公子と逃げの貴公子』、『狂乱の小太郎と逃げの小太郎』のどっちかにすればいいよ、めんどくさい。と言ったとか、言わなかったとか。そして。
あ、『発狂逃走中の貴公子・小太郎』これでいこう。そうしよう。と言ったとか、言ったとか。

結局言ってるって?気にしない。

兎にも角にも、その発狂逃走中の貴公子・小太郎(なんか長ったらしくてやっぱめんどくさいな、もういいや、逃げの貴公子で)の手掛かりを探して、綴は街にやってきたのだ。

逃げの貴公子の異名を持つ男だ(持っていないけど)。もしかすると、逃げたふりだけしてまだ街に潜伏しているかもしれない。それを危惧しての捜索だった。けれど、手掛かりは全く掴めず、どうやらこれは本当に街から出ていってしまったようだ、と綴は小さく溜息を零した。それと同時に白い息が空気に舞って霧散する。

時刻はちょうど昼飯時。さすがにお腹の空いた彼女は、温かいもの食べたさに辺りを見渡した。すると、目に入ったのは『北斗心軒』という名のラーメン屋。
そういえば、最近ラーメンを食べた記憶が無いな。と、ここ最近の食事風景を思い浮かべた。

冷えた体を温めるにも、ラーメンはうってつけの食べ物かもしれない。
そう思い、彼女は迷わず店の戸を開けた。

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