「おれ、お花畑の中でしにたーい」
「は?」
またこの人は突拍子もないことを言う。
そんなのここで考えて、私に伝えてもしょうがないのに。
「でもほんとは名前に胸でちっそくししたーい」
ぐりぐりと頭を胸に押し付けてきて少し痛い。
腰にまわされた腕も痛い。
絡ませてくる足が痛い。
ベッドから落ちそう。
「おれが生まれる10世代前って1024人のおとーさんとおかーさんがいるんだよ。それってすごくない?」
「すごいね」
そしてまた突然話題が変わった。
「意味わかんなくない?」
「わかんないね」
「だっておれはおかーさんのおかーさんのおかーさんのおかーさんすら知らないんだよ?人間って多すぎない?」
こんなことを言ったからって、その後に『おれたちが出会えたのって奇跡じゃない?』なんて甘く続かないのが夜桜ちゃんなのだ。
「名前、」
「なあに?」
「おなかすいたあ」
「なんかつくろうか」
「おれねーホットケーキたべたい」
120415朔弥