「はぁ?校長の宝物だぁ?」


昼休みののんびりした時間。私は屋上で昼ごはんを食べてようとしていた土方くんに近寄り、頷いた。

「そう、校長の宝物」
「……お前、銀八のあの犬の餌でも食ったのか?」
「食べてないよ!なんでさ!」

土方くんは自炊したのだろうか、お弁当を持ってきていて、それに持参したマヨネーズを思いきりそれにぶっかけている。(うぉぉ……油なにおい……)

「いや、苗字はそういうふざけた話にゃ食いつかないタチだと思ってたからな」
「あー、そうだっけ……」
「……なんだよ、歯切れ悪ィな。なんかあんのか」

あら、ご察しがよろしいこと。
私は胡座をかいてる土方くんの隣に体育座りした。コンビニで買ったサラダスパゲティを開けて備え付けのドレッシングをかけた。かけてる途中で人差し指にドレッシングが付いてしまった。ぺろり、舐める。お、ごまドレッシングって結構美味い。

「行儀悪い」
「土方くんに云われたくないなぁ」
「あんだと?」
「私が『校長の宝物』を捜したいのはね」
「おい、話いきなり戻すなよ」

爪の間まで入ったごまドレッシングを、ちゅ、と吸う。あぁ、なんか本当行儀悪いかも。土方くんを見たら土方くんも私を見てた。眼が合ったら何故かびくつかれた。な、なに。睨んじゃってた?私。

「おおおお前ちり紙とか持ってねぇのか!女だろ!」
「わ、悪かったわね!生憎鞄の中に置いて来ましたよ」
「し、仕方ねぇな。ほら」
「……土方くんてさ、しっかりしてるよね(てか「ちり紙」すか)」

何故かどもる土方くんに「ちり紙」を貰い(土方くんが云うとウケる)、指を拭った。そして拭いつつ土方くんを見て、云った。


「私さ、好きな人、いるんよ」


少し、少しだけ、土方くんの肩が揺れた。
私は視線を反らさぬまま続ける。


「その人ね、さりげないの。さりげなく私に優しくて、さりげなく傍に来たかと思えばさりげなく居なくなるの。」
「……掴み処ねぇな」
「うん、そんな感じ。」

ドレッシングを拭い終わった「ちり紙」に視線を落とした。所々ごまドレッシング色のそれを小さく丸めてゆく。

「その『校長の宝物』はね、どうやら学校の何処かに、何処かにあるらしいのですよ」
「……ど、何処か?」
「何処か。」
「……で?」
「それ、気にならない?」

また土方くんを見た。彼は食べ終わってない土方スペシャルをあぐらをかいた足の上に置いて私の話を訊いてくれてる。そうゆうところがあるからちょっと横暴でも慕われるんだな。

「はぁ?その『宝』とお前の、す、好きなやつと何の関係があんだよ」
「(よく噛むなこの人。)あぁそれはさ、」

最後に「ちり紙」をぐ、と握り締めて手元を見て云った。


「その『宝物』を見つけて、見つけられたら告白しようかな、て」


いや、する。決めたの。見つけられたら、なんか告白するのも勇気出るかなって。そう私はわらって云った。土方くんの顔を見て。




青天の霹靂



ふがいなくも俺は、こいつが指を舐める仕草やわらった顔に不整脈を起こした。そして思わぬ発表にも。
なぁ、俺はどうしたらいい。「仕様がねェから手伝ってやる」とか、云えばいいのか?ふざけんじゃねェ。なんでわざわざ、お前の為に、俺が、



「……いつだよ。」
「?」
「いつ、捜すんだ。その『宝』とやら」
「……手伝ってくれるの?」
「……マヨ1ダース」
「いくらすんのさ、それ」


俺の気持ちと引き替えなら、安いもんだろ、それくらい。



(08.3.29)

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