明日からは、笑って「おはよう」

※独自設定があります。
※鯰尾さんがやや身勝手です。




 雨が降りそうだったから、干してあった洗濯物を取り込んだ。今日は晴れのち曇りで雨は降らないという天気予報が外れたらしい。政府から支給されたてれびという箱には随分慣れたから、つるつるの面に映っていた人間に文句を云うことがたまにあった。燭台切さんは特に。(料理だけじゃなく、洗濯に関してもうちでは隊長だ。)
 ついでと云ってはなんだけれど、主の洗濯物も取り込んだ。主は戦場には出ないから洗濯は別でしている。というか主のは主が自分で洗っている。俺たちのは大量の汗とか返り血とか物騒な汚れが多い分、主の畑仕事や書類の墨汚れなどのものと一緒に洗うのは気が引けるのだ。主は「別に一緒でも……」とか云いかけてたけれど、やっぱり燭台切さんが許さなかった。別けて洗う話になった途端、主が自分でやると云い出して、なんだなんだとなる刀たちの中で少し考えてから「その方が良いかもね」といつでもかっこよく決める刀剣男士は直ぐに何かを理解していたようだった。そして柏手よろしくパンパンと空気が変わるような音で手を叩いた彼は次の仕事に取り掛かっていった。よくわかっていない他の男士たちを引き連れて、まるで兄が弟達を率いて行くように。

 俺が兄のことを口に出すと決まって主は顔を強ばらせた。はじめの頃はよくわからなくて、どうしたんですか?なんて訊いてしまっていたけれど、ある日あっちから「一期一振さん……まだいなくてごめんね」なんて返ってきたから拍子抜けしたものだ。俺がそんなこと気にしているとでも思ったのだろうか。こんなに元気いっぱい悪戯大好き深いことはなんにも考えてませーんという雰囲気の俺なのに。いつだかそれっぽいことを口にしてしまっていたのだろうか?人間の子どもじゃあるまいし。確かに短刀の次に短い刀種だけれど、精神としては子どもではないのだから、ましてや刀だ。主は俺をなんだと思っているのだろうか。

 思い出し笑いならぬ思い出しモヤモヤになりながら主の洗濯物を取り込み、とうとう降り出したしとしとの小雨を横目に、彼女の部屋の前の縁側で洗濯物をたたんでいたらキシ、と床板がきしむ音を耳が拾った。顎がぴくりとして、意識が膝の横の本体に向かう。でも此処は本丸内で、主の部屋の真ん前だ。敵だったらもっと俺よりも鋭い薬研とかの短刀が先に気付いているはず。警告は出ていないし、何よりこの気配はそんなんじゃない。この遠慮がちで、でも気になって仕方ない、みたいなとても刀剣男士たちを束ねている人とは思えない、素人同然の気配は。

「主さん。無言で俺(刀剣男士)の後ろにつくのはどうかと思いますよ〜?」

 振り返らず声だけを投げかけたら「う゛ぇ」という蛙を握ったら出しそうな声を返して来たのが、俺の主。やっと振り返ると何故か「しまった」みたいな顔をしておろおろし出したと思ったら、俺の膝の上の物を見て停止する。そうして驚くというよりは、ぽかんとしていた。

「……鯰尾が取り込んでくれたの?」
「え?これですか?はい!……あれ、駄目でした?肌着とかが恥ずかしいとか」
「え!ううん!ありがとう。助かっちゃったなぁ」

 へへ、と嬉しそうに笑ってから、一瞬スッと考えを巡らした表情を、俺は見逃さなかった。

 いつもそうだ。この人はおそらく、本丸内で俺にだけ、距離を取っている。




 俺がこの本丸に来たのは遅くはなかった。政府から与えられた初期刀と云われる立場の山姥切さんと、いちばん最初の鍛刀刀の薬研、それから俺が顕現された。初めましてのときは、うっかり笑った。主の第一声が「わぁ。髪が長い」だったから。他にもっとあったろうに、いちばん最初がそれかぁと思ったら笑ってしまって、そして緊張感がないなと思った。馬鹿にしてるつもりはない。別にそれで良いと思った。それくらいの方が個人的にやりやすそうだったから。
 でも、やりやすかったのは最初だけだった。
 いつか会議中のこと。翌日の出陣に向けて主と部隊員で意見の出し合いの最中、俺が主の発言に質問を投げたところ「ごめんなさい」と返されたことがあった。「ごめんなさい」だ。質問の答えを返される前に謝られると思っていなかったから「それは、わからないってことですか?」と返すと彼女は表情を固めて言葉を詰まらせてしまう。そのときは山姥切さんが答えを促して補足して、そのまま話は進み会議は終了・お開きになったけれど、俺は納得出来なかった。そういう似たようなことが、何度も何度もあったからだ。声をかけても謝られたり、目を合わせて貰えなかったり。知る限り、俺にだけ。他の男士には無いことだ。理由はわからない。
 人間の子どもみたいに、どうしてどうしてとグズることが出来たら良かったかもしれない。どうしてすぐ謝るの?どうして自分の言葉にしてくれないの?どうしてすぐに目をそらすの?俺だけ。俺にだけ。他のやつらとはちゃんと話すでしょう。笑って受け答えするでしょう。どうして、どうして??どうして??????????────俺には出来ない。「まぁ、主と刀剣男士のウマが合わない本丸もあるよね」そう思っておけば、そのうち気にしなくなるかなと思っていた。

 ────思っていた。はずなのにね。

「主って、俺のこと良く思ってないんですかね」

 口から滑り出た言葉に、主みたいに顔には出さなかったけれど「しまった」と思った。まな板で適当に皮むき対応済みの人参を切っていた手が止まる。夕餉当番の最中にあの人のことなんて考えていたからこんな失態をしでかしてしまったんだ。兄弟ならまだしも、初期刀である山姥切さんに、こんな主に対する愚痴みたいなものを、明るくない声色で、俺は、何を。やっべーやっちゃった!うっそでーす!みたいな勢いで誤魔化そうとして、隣でジャガイモの皮を剥いていた山姥切さんを見上げると、彼はこちらを見て少し驚いているようだった。何だ何だ、今日の俺は相手を驚かせることに長けているのか。鶴丸さんに自慢しなきゃ、なんて現実逃避らしいことをしていたら、金色の髪が揺れた。山姥切さんがほんのり首を傾げて、口を開く。(この初期刀さんはいつも自身を過小評価するけれど、実のところ本当に綺麗な見た目をしているからたまに憎らしい。でも憎らしいから云ってやらない。絶対に。)

「……お前の方が、主を嫌っているのかと思っていたが……その様子じゃ、違うみたいだな」

 会話の相手が何を云っているのか、わからないふりをするのには慣れてしまっていたけれど、今回ばかりは取り繕うことをやめていた。そういう時じゃない。それくらい、俺にもわかるから。今の俺は「コイツ何言ってんの」という顔をしていると思う。
 山姥切さんは「いや、今は嫌っているというよりは……」と勝手に話を進めて行く。この人はすぐに被っている布で顔を隠すからこっちの目や顔をよくよく見ない。だから俺の変化に気付かない。好都合と云えば好都合なんだけれど、今となってはあまり無意味だ。どっちでも良かった。ばれようが、ばれまいが。

「嫌っているというよりは……今は少し違う……怖がっているような……」
「……あはは!怖がってる!?俺が?俺ですよ?」
「あぁ。お前は……俺(刀剣男士)たちには……分け隔てない対応をしていると思う。自身の兄弟たちに限らず、その他の短刀たちや新しく来た刀(やつ)らにも、本丸の決まりや人間の身体になったときにやるべき生活、俺たちが何故生み出されたかなども率先して教えたりしていることを知ってる。困ってるやつは放っておかないし、勿論恐怖なんかない。」
「そりゃあそうですよ。俺、此処では結構古株ですし」
「なのに、主とは……何かが違って見える。目に見えてではなくうっすらと感じる、何か……まるで透明な壁があるような……」
「…………」

 山姥切さんの緑色の目が、白い布と金色の前髪からそっと見える。夏のみずみずしい葉っぱの色に似ている瞳が、自身とは違ってよくよくお喋りなもので、こう訴えているように聞こえてきた。

「お前の方から起こしたことだろう。」
「それなのに、随分と都合が良いな?」

 山姥切さんの口はそんなこと、一言も云っていないけれど。




 それから、俺が勝手に無理進軍をして折れかけたのはすぐのことだった。あのとき、特に自棄になっていたわけでも、折れたいなんて思っていたわけでもなかった。……はずなのだけれど、正直な話よく覚えていない。気付けば目の前に時間遡行軍の槍がいて、相手の目がギラリと赤く光ったことだけは覚えている。そこからは真っ暗だった。受けたはずの衝撃も痛みも何もかも、今は覚えていない。お気楽なものだ。なのに、隊長だった山姥切さんには謝られてしまった。「お前の状態に気付けていなかった」だって。参っちゃったよね、何それ。本当、見た目も心も綺麗とか、心底やめて欲しかった。
 心というものが本当に刀剣男士にあるのなら、俺のはきっと荒んでいるんだろう。水を与えていなかった畑の土や、ずっと掃除を放置していた倉みたいだ。カラカラでパサパサで薄汚れていて、綺麗じゃない。たぶんそんな風になっているんだ。だから。

 だから今、貴女に逢いたくなかったんだけど、主さん。

「札、使っちゃったんですね。」

 手入れ部屋の障子の向こうにいるのは、主が到着してから気付いていた。先にも云ったように、気配が素人同然なのだ。いい加減少しは隠すことを覚えたらいいのに。声をかけた瞬間の慌て具合も呆れて溜め息が出るほどだった。オロオロとした気配のまま、彼女は弱々しい声を出す。

「話したいことがあって……ごめんなさい。ゆっくりしたいところだと思うんだけど」
「いいですよ。どうぞ入ってくださーい」

 おそるおそるといった雰囲気で障子を開けた主は寝間着姿だった。開いた障子の隙間から外を見やれば空は真っ暗。そういえば時間のことを考えていなかった。もうすっかりとっぷり夜のようだった。外の音も静かだ。強制帰還から何時間経ったのだろう。主は俺に云われた通り部屋の中へ入り静かに障子を閉めて、「電気つけていい?」と確認する。頷けば、豆電球だった天井の灯りを2番目の明るさにする。輪っかの蛍光灯が2つ、大・中と中心に向かって小さくあって、真ん中には豆電球と灯りを調節出来る紐。その紐を3回引っ張ってから、俺が寝ている布団の近くに腰を下ろす。俺はゆっくりと起き上がる。彼女が手を貸そうとしたのを「大丈夫です」と制したら、少し困った顔をしてからへらりと笑った。

「国広くんからいいかげん風呂に入れと怒られて……だから寝間着なんだ。こんな格好でごめんね」
「もう夜ですもんね。当たり前ですよ」
「鯰尾も、このあと入ってね。まだ間に合うはずだから」
「はーい。ところで、話したいことってなんですか?そっちが本題でしょ?」

 ずっとへらへらしながら目を合わせてこなかった主の肩がピクリと動いた。話を切り出す瞬間を掴めていなかったのかそわそわとしていた彼女は呼吸を止めた。肩に力が入り、そうして意を決したように短く息を吸う。喉の奥に力を込めるようにして、こちらを見つめる。今までこんなに目と目が合ったのは、顕現した日以来なんじゃないだろうか。でも、あの時と違って彼女が口にするのは、俺の髪の長さへの感動みたいな平和なものじゃなくて。

「……わ、私のこと主として認められない……のはわかる。私、こんなだから。それでも良いのだけど、職務は全うしてほしいの」

 ……今、この人、なんて云った?
 俺が口を開く前に、彼女はさらに続ける。

「人間の生まれる子どもが親を選べないように、貴方達も審神者を選べない。運命みたいに決まってしまう……から申し訳ないん、だけど、でも、思うところがあるのならきちんと云って欲しい。他の男士伝いでも良い。私が頑張れることなら気を付ける。私たちがやってることは、世界のこれからに関わっているから、なるべく不安要素は取り除きたくて」
「……どうしてそう思ったんですか」
「……せ、世界のこれからに関わる仕事だから……」
「あぁ〜そうじゃなくて。俺が主を、認められない、とか、そういうの」

 どうして思ったのか知りたいです。
 訊いてどうするんだろう。訊いたところできっと、俺が訊きたくないことしか返ってこないだろうに。……訊きたくないこと、ってなんだ?どうしてしまったんだろう、こんなのまるで、怯えてる人間の子どもみたいだ。何を怖がっているんだ。気付けば掛け布団をぎゅうぎゅうに握りしめていることに気付く。これではますます、人間の子どもじみていて乾いた笑いが口から零れそうだった。

「…………云わないと、駄目?」

 主の小さな声が聞こえてすぐ彼女の腿の上にあった右手首を掴んでいた。彼女は驚いた顔をした。俺も驚いた。顔に出ていたかはわからない。お互いに黙ったけれど、主は何か諦めたように眉尻を下げる。あとひと押しだと思った。

「云わないと駄目です」
「…………きっと鯰尾のせいに、してしまう」
「それでもいいです」
「……なん、なんで、今、や や、優しくするの」

 彼女の問いかけに、情けないほど小さな「え?」が口からポロッと転がり落ちた。それを合図にしたかのように、まるで今までせき止めていたであろう言葉たちが、主の口から溢れ出す。感情に突き動かされているからか、彼女の口は言葉が追いついていなかった。

「な なんで今、今更優しくするの、今日だってそう、なんで、私の洗濯物……鯰尾のせいにしてもいいとか、どうして、いっ 今までそんな、わた、わたし、私の事嫌いだと、思っ……」
「……嫌いだなんてそんな、」
「目と態度がそうじゃないッ!!!!」

 それははじめはたどたどしく、次第に強さを増していく。せき止められていた川が決壊するときってこういうものだろうか。彼女の身体がわなわなと震えているのが、掴んでいる手首から伝わって来て内心戸惑っていたら、訊いたこともない大きな声を投げつけながら自分の手首を掴んでいた俺の手を振り払う。力いっぱい振り払われたのにまるで痛くない。彼女の力いっぱいなんて俺にとっては何ともないことを知って、背中がゾワゾワとした。良くない感じだ。良くないものが、俺の背中からそっと語りかける。「人間なんてこんなものだよ」「こんなにも弱々しいよ」だから何だと云いたい?黙っていてくれよ。俺は今主と話をしているんだ。ほら、彼女、目に涙を溜めてこんなにも。
 嗚呼、可哀想に。主は泣いていた。泣きながらこう云った。

「名前を呼んだとき、お願いをしたとき、いつもどうでも良さそうで、そのあとなんでもないように笑って返事をする……そんなの何回も続いたら、…………」

 何のことを云われているのかさっぱりわからなかった、────なんてことはなかった。俺ははじめからそうしていた。あの頃は何にも考えていなかった。その方がやりやすかったから。人の形を得た生活も出陣もやりやすかったから。自分の意思とは関係ない場所に呼び出されて「世界のために戦ってください」だって?何となく意識の底でそれは自然の流れだと理解するように仕組まれていたみたいだけど、でも今目の前で目を三角にして怒って泣いている人間があのときあまりにも弱々しくて平和ボケしているように見えて、俺は恐らくガッカリした。馬鹿にしているつもりはなかったけれど、同時に自分のやりたいようにやりやすそうだなと思った。だから自分のやりやすいようにしていたのだけど、でもだんだんとやりにくくなった。目の前の人間は俺を避けるようになった。出陣を減らされるとか休みを貰えないとか、そういうことはなかったけれど、ただただ、俺との接触を避けているようだった。それがだんだんと何ともやりにくい。なんでだろう?と思ったときに、ひとつ考えが浮かんだ。それはとても自己中心的で、傲慢で、独り善がりで、どうしようもないものだった。自分でそう思うのだから、相手からしたら目も当てられないものだろう。
 それを口にするかしないかを考えているうちに、身体を丸め肩や背中を上下させながら、息を整えていた主の動きがピタリと止まる。ネジ巻き切れのカラクリみたいに動かなくなったから、見えているつむじから目が離せない。息をしていないみたいに見えて、振り払われた手を伸ばしそうになったところで、ポツリポツリと声が落ちてきた。その声はとても細く頼りなくて、耳をすまさないと拾えずにそのまま外の夜に溶けて消えてしまいそうだった。

「……方法がないわけじゃないんだ。審神者を選べないって云ったけど」
「…………」
「いろいろ手続きを通して……ちゃんとした理由を本部に云えば、別の本丸に移ることが出来るの」

 それは初耳だった。というか、ほとんどの刀剣男士は知らないと思う。

「……どうしてはじめに云わなかったのかって…………私の刀だもの、手離したくないじゃない」

 ゆっくり丸めていた身体を元に戻した主は泣きながらもヘラリとしていて、それはやるせないというような表情なのに優しくて、彼女のそんな顔は初めて見たものだから俺はどうしようもなくなってしまった。今までどうやって会話をしていたかもわからなくなって、口を開こうにも音は出なくて、何も云えない。少し視線を下ろせば、彼女は自身の腿に寝間着の上から爪を立てていた。怖いのだろうか。俺が?この話をした後のことが?
 滑稽だ。自分で主をこんな風にさせておいて、やっぱりいつもみたいにヘラヘラ笑っている方がいいな、なんて今更思ったところで、こうやって彼女の感情を決壊させたのは俺なんだ。同時に「こんなに彼女の感情を動かせたのも俺だよ」って良くないものがまた背中から語りかけてくる。

「主さんは……こんな俺でも此処にいてほしいんですか?」

 ポツリと、情けないくらい小さい声で問いかけた。すれば彼女は急にとても真剣な顔になって、それから穏やかに少し微笑んだ。

「もちろん。それに……私が自分の意思で顕現した初めての刀だからね。鯰尾は」

 あるのかないのかわからなかった左胸付近の骨の下の心臓が、ドクンと大きく脈打って、それから今まで本当に流れてたの?ってくらい大人しかった血液が、身体中を勢い良く巡り出した。全身が熱い。折れる寸前のときだって恐らくこんなにならなかった。熱い。熱い。特に、顔が。
 目を見開いていたらしく、多分俺は驚いていたのかもしれない。何故か泣きそうになって、顔も熱いからどうにかしたくて、バチンと音を立てて両手で顔面を覆った。「鯰尾!?」と主が慌てていたけれど、知らない。今は知らない。少しでいいから黙っていて欲しかった。

「なまずお……ごめん、そんな泣くほど嫌だなんて……」
「……違いますよ、うるさいな、これのどこをどう見たら嫌がってるように見えるんだよ……」
「……喜んでるの?」
「ちょっとまじで少しでいいから黙ってくださいよ!」
「…………」
「急に黙んないでくださいよ!」
「もうわかんないよやだよーーーー」

 結局俺は、自分からガッカリして突き放したくせに、向こうから突き放されるのは嫌で、「大事だよ」って云われたかったんだ。

 酷い癇癪で、ワガママだ。でも、この人への酷い仕打ちはこれで最後だ。たぶんきっと。もう少し顔の熱がおさまったら、ちゃんと云うから。「今までごめんなさい」って。だからそれまで、待っていてくださいね。




明日からは、笑って「おはよう」
(2021.6.20)
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