安心の使い方。
※会話文のみです。「南沢くん」
「なんだよ」
「南沢くんは毎朝その髪型にどのくらいの時間かけてセットしてるの?」
「セットっていうか……適当だよ、適当」
「適当なわりにそのうざったい前髪をふぁさふぁさしまくってるよね」
「……お前一応一個下だよな?」
「なに、そんなこと気にしてるんですか?年齢なんて私たちにとっちゃなんの隔たりにもなりませんよ、だから」
「……なんだよ」
「はやく先月貸した1000円返してよこの前髪ふぁさ太郎。今月もうカツカツなんだよ明日の昼飯にかかってんだよ」
「お前俺のことなめくさってんだろ云えよ。怒らねぇからさ」
「やだっ、そんな右手グーにしちゃって!本当に怒ってます?短気ですねぇ短気は損気だって云いますよ損気の意味わからないけど」
「損をする性質って意味だよ」
「わー南沢くんは頭良いなぁ」
「はッ、お前に云われたところで苛々するだけだな」
「……褒めてますよ?」
「わかってんだよ急にやめろその勢い無くすの。なんか調子狂う」
「やだっ、南沢くん私のことそこそこお気に入りじゃないですか」
「何処をどう見たらそんな答えになるんだ説明しろ」
「私がしおらしくなった途端のその反応ですよ。ギャップ萌えってやつですね?いやぁ私も女子力付いたわ」
「大丈夫だひとつもそんな力付いてない。安心しろ」
「安心の意味が間違ってんだよ馬鹿にすんなよ前髪ふぁさ太郎」
「そのいきなりキレんのやめてくれついていけない」
「あら、ついてきてくれようとはしてるんだ?優しいですね」
「俺はいつだって優しいんだよ。それにお前と話すのは嫌いじゃない。」
「あはは、なにそれ」
「好きだよ」
「……は?」
「好きだっつってんだよ」
「ん、……すき?」
「あぁ」
「…………おー、あれか。す、あの、あれか。……あれかあれだ。」
「なんだよ。どれだよ。云ってみろよ」
「笑ってんなよ前髪ふぁさ太郎。あれですよね、あの、すき、」
「隙間がどうのなんてくだらないこと云ったら罰を与える」
「なんですか!お前あれですか!どっかの王様かなんかですか!?」
「はははどうしたんだよさっきの威勢は。ほーら答えてみな名前ちゃん」
「名前呼ぶんじゃありません鳥肌が立つ。……あの、あ、私今日倉間と帰るんだった、それじゃうわぁ腕掴むのやめてくれません?」
「待てよほら、先輩が優しく答えを待ってやってんだ答えとけよ。しかも倉間とか嘘だろ。今日あいつ浜野たちと映画観に行くって云ってたからな。」
「倉間なんなの!南沢さんにいちいち報告ってなんなの!」
「あいつ俺の舎弟」
「……否定するところ無し。」
「まぁそんなんどうだって良いんだよ。ほら、云ってみな?俺はお前になんて云った?」
「…………」
「…………」
「…………、」
「……泣くのは、ずるいな」
「……泣いてなどいない。これは目から、の、何かこう、塩辛い液体、」
「それを泣いてるって云うんだよ。あぁもう、ほら」
「……ハンカチーフ」
「その云い方やめろなんかくすぐったい」
「……すみません。」
「……悪かったな。そんな、つもりはなかった」
「……だいたい良く考えたら、別に、私個人に対する言葉じゃなかったじゃないですか。なんでそんな含んだ感じにしたんですか。私赤っ恥だし、泣き損だし、勘違い野郎だし、そんなことしてるから周りの女の子たち勘違いしてあんたのこと好きになっちゃうんですよ。勘違いする方もあれかもしれないけど、勘違いさせる方にも責任はありますからねふざけんなよ前髪ふぁっさふぁさ太郎が」
「……あー、なんて云ったら良い?」
「はぁ?何が。」
「苛々するなよ。ちゃんと真面目に云ってやるから」
「お前を一個人として好きだ。お前は勘違いなんかしてない。安心しろ」
「……安心出来ないよ。南沢くんもてるもん」
「じゃあお前が俺にもてるように努力しろよ。認めてやるから」
「えらっそーになに云ってんですか。馬鹿じゃないですか。」
「そうだな、馬鹿だな。お前なんかにそんな感情湧いてる自分の頭が沸いてるよな」
「い、あ、う」
「なんだよもう泣くのやめろ……結構困る」
「こま、困る、困る……!」
「あー悪かった。困ってない。全然困ってない。……お前そんなやつだった?案外弱いな」
「うるせえな南沢のくせに。」
「もうわけわっかんねーよ!」
でもわけがわからなくても呼吸は合ってるから、多分この先大丈夫、な筈。
安心の使い方。
(2012.4.5)
友達との会話の中で好きな言葉があったので、拝借しました。本当は研磨さんで書きたかったのですが、研磨さんは好きすぎて今のところ書けないので。