■男子高校生の憂鬱

バシャバシャバシャバ
水しぶきの音と、それに続く荒い息遣い。
部活練習後にもかかわらず、凛はプールで練習に明け暮れていた。
誰もいなくなったプールでの練習。
いつものことだ。

「…く…そっ。
なんか体が思うように動かねぇし…。熱いし怠い…」

水から顔だけ出した凛は、プールスタート台横の壁をドンと叩きながら、吐き捨てるように呼吸を荒げながら言った。

「松岡センパイ、大丈夫ですか?
…なんか最近調子がー‥」

プールのスタート台の上から覗き込むように凛を見ていた後輩の似鳥が、口を開いて言う。
こうやって寮の同室である後輩似鳥が部活後の練習付き合ってくれるのも、日常だった。
最後まで言い終わるまでに、今度は凛が口を開いた。
「そんなことわかってる…!!!」

…苛立ちが隠せない。
少し前に、偶然再会を果たした幼馴染のハルのことを考えると、頭も体も熱くなりすぎて。
熱さを忘れるためにプールへ飛び込んで、ただひたすらに泳ぎまくっても、凛の体中の熱さを消し去ることはできなかった。
凛の中でズクズクと何かがうごめく。

「…先輩…。今日はもう、終わりにしませんか?」
似鳥がプールの中にいる凛に手を差し伸べた。
「…ん…サンキュ…」
似鳥の手を握る。

そう言って似鳥にプールサイドへ引き上げて貰い、一息つこうとスタート台へ座ろうとした瞬間、似鳥が凛の胸に飛び込んできて、凛に抱きついた。

「…センパイ…溜まってない?」

何のことを聞いているのか一瞬わからなかった。が、その意味がわかって頭がカッと熱くなった。

「お前…!!!なに言って…!」

「センパイ怒らなで聞いて。
俺、センパイと部屋同室じゃないですか。だから、先輩の体とか、その…最近のセンパイ見ててそう思っちゃって…。」
暫しの沈黙。
「……もし…そうだとしたら…
俺はどうしたらいいんだよ…」

言葉の語尾が小さく震える。

「…センパイ…」

似鳥は俺に抱きついたまま、俺を見上げて言った。

「センパイ…もし良かったら、俺に任せてもらえませんか…?」

返事をする時間を与えず、似鳥は俺をプールサイド横のスタート台に座らせた。

俺の前には似鳥が向かい合うように立ちはだかる。
いつもは自分のだいぶ下にある似鳥の整った顔が、今は俺より少し上あるのが、何か不思議に感じた。
いつもは遠くにあるようで、よく知った顔。

綺麗な目だな…

凛がそう思いながら似鳥の顔を見つめていたら、似鳥がにっこり笑い、それと同時に顔が近づいてきて、唇が触れあった。

「似鳥…おまえっ…!!!」

動揺を隠せなかった。
原因のわからない熱さと怠さの残る体の中の何かがドクンと疼く。

…いや、嘘だ。
俺は知ってる、この感覚が何なのか…

「センパイ…だってセンパイ…
溜まってるでしょ?
だって…体辛そうだから…」

似鳥は言いながらゆっくりと凛の足元にひざまずいた。
そして、チラリと凛の顔を見上げてまたにっこりと笑ってから、凛の太腿に手をかけて、ゆっくりと足を開かせた。似鳥の目前に、凛の股間が真正面形に向かい合う形になった。そして、似鳥は凛の熱を帯び始めたその中心を、水着の上からやさしく撫で始めた。

「…あっ…」

敏感な場所を触られ、凛は思わず声を上げた。

「センパイ…もぅこんなに反応してる…。
…すぐに終わるから、
楽にしててください…」

抵抗…すべきだったのかもしれない。けども、若い体は素直で、未知の欲望には逆らえなかった。

競泳用のピッタリと肌に密着した水着ごしに、ハッキリと浮かびあがる凛の形。

水着ごしに似鳥がなんども擦りあげてきて、その度に凛は堪えきれず、もどかしいと訴えるように、熱っぽい声を漏らした。

「っう…ん…似鳥……
…あっ…ん…」

「…センパイ…これ以上水着汚れたら洗うの大変だし…ね」

似鳥が言う。
「…脱がしますね…?」

「…ん…」

頬を紅潮させた凛は、まるで子どもの様に素直に頷いた。
凛が少し腰を浮かせると、似鳥は何の躊躇もなくズルっと一気に水着を足元までずらした。

水着による締め付けからの解放。急に外気にさらされて、ビクビクと震えながら真っ直ぐ力強く上を向いた凛のアレ。

似鳥は遠慮のない手つきで、凛を撫で続ける。凛のソレは小柄な似鳥の手では包み込めないほど、大きくて力強く、似鳥が手を上下に動かすたびに、ビクビクと脈打った。
指先で先端をグリグリと広げるよう刺激すると、先端からは薄く白い雫が溢れてきた。

「センパイ…松岡センパイ…」

似鳥は凛のソレを愛しそうに手で包み込み熱っぽく凛の名前を読んだ。

もう言われがままだった。
後輩に好きにされている自分、情けない自分…

「…センパイ……すきです…」

似鳥は言いながら、握っていた手にさらに力を込めてゆっくりと上下に動かし始めた。

「…あ…っんっ、…くっ…ん…、にと…り…」
気持ち良かった。ただひたすらに。

「先輩のここ、すごい反応してる…」

似鳥は手を動かしながら観察するように眺め、愛しそうに言った。

「…誰だって…触られ…た…ら 当たり前…だ」
「……七瀬さんじゃなくて、俺でも、ですか?」
「…何で…ここでハルの名前が出てくるんだよ…!?」

意味がわからなかった。

ただ、「ハル」という名前、言葉が出てきただけで、凛は体が張り裂けそうに熱さを増すのを感じた。

「…すみません…先輩。変なこと聞いて…」

そう言って似鳥は凛の熱を持って立ち上がりドクドクと脈打つソレを強く握り直し、徐々に速度を増しながら上下に擦り上げた。

凛はプールスタート台の端を握りしめていた両手を離し、思わず自分の股の間でうずくまる似鳥の肩を掴んだ。

「っ…はぁ……は…ぁ」

「…センパイ…気持ちいいですか?」

似鳥が問いかけてくる。

「…うっ…」

そんなこと、素直に言えるか…

「…センパイ…すごいビクビクしてる…」

似鳥が凛の分身と顔を交互に見ながら言った。

「…そんな…風に触られたら…誰だ…って…そっ…」

凛は強がって言ってみたものの、似鳥の手の動きに合わせ、目の前がチカチカするのがわかった。体はブルブルと小刻みに震える。

凛は似鳥の両肩に置いた手にグッと力を込めた。

似鳥は、絶え間なく手を動かしながも、チラチラと凛の顔を伺う。
目を潤ませ顔を頬を赤らめる凛。

目があった。

「センパイ…かわいい…」

似鳥は、自分のしたことに素直に反応し感じてくれている凛を、ただかわいいと思った。

と、似鳥は思わずそんな凛のビクビクと反応するモノを口に含んだ。

「あっ!…んっ…ん…あっ!」

とっさに凛は逃げる様に体をよじったが、似鳥にがっちり太腿を握られていたので振り払うことはできなかった。いや、振り払えなかった。

とっくに理性はふっとび、ただそこにある快楽に溺れていた。

「…に…とっり…
も…でそ…」

凛はそう言うのがやっとだった。

似鳥は凛のアレを根元まで咥え込んで、上下に動かす。
舌がねっとりと熱く絡まってぐちょぐちょといやらしく音をたてる。
気持ちいい…
似鳥がひときわ先端を強く吸い上げ舌で刺激を加えると、一気に体中の熱が一箇所目指しこみ上げてきた。

「…に…とり…っ!
もっ……もっ…で…る……!!!」

凛は似鳥の肩に置いた指に一層力を込め、思わず爪を立てた。

凛の先端から、似鳥の口めがけて勢いよく白い液が飛びだす。

「…うっ…あっ!…あっ!…っ」
「…セン…パイ…!」

ビクビクと身体を大きく震わせる凛。

暫くは凛と似鳥がそれぞれ肩で大きく息をしていた。

似鳥は凛が放った精液を吐き出すこともせず、腕で口元を拭っていた。
こいつ…飲んじまった…
凛はそう思った。

荒い息が落ち着いてくると、
急に頭の熱が冷めて、自分が何をしたのかがハッキリとわかって、罪悪感や羞恥心や、色んな感情がこみ上げてきた。

「…似鳥…ごめ…ん。…俺、お前の口に…」

凛はしばらくうつむいて、それからチラっと似鳥を見ると、似鳥はにっこりと笑い、

「…センパイのアレ、
ちょっと塩素の味しましたね。」

と言った。

「なっ…!?」

「当たり前だろ…さっきまで泳いでたんだから…!」

凛は顔を赤らめながらこう言い返すのがやっとだった。
似鳥は続けて凛にこう問いかけた。
「…センパイ、身体熱いの収まりましたか??」

言われてみると…確かに…
体は熱くないし、怠さもないような…

「…あぁ、確かに治まったかも…」

そう言って凛は頷いた。

「…センパイ、良かったです。」

似鳥がまたにっこりと笑い、
こう言った。
良かった…のか?
似鳥がそう言ったことで凛はどこか安心した様な表情を浮かべた。

「…センパイ、そろそろ寮に帰りましょうか。遅くなっちゃった。」

まるで何事も無かったかの様に。

「…そうだな」

似鳥は凛をその場に立ち上がらせて、足先に引っかかったままだった水着を履かせた。似鳥に手を引かれながら、更衣室へ向かった。
更衣室へ向かう途中、凛は体を屈め似鳥の耳元で囁いた。

「…似鳥…、サンキュ…」

似鳥は俺を見てにっこりと微笑んだ。





[ 1/34 ]

[*prev] [next#]
[小説置き場に戻る]
[しおりを挟む]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -