■眠れない夜

前置き

※既刊「恋せよ!男子中学生」のお話の合間のエピソードです。
 タイミングとしては、 P.14「無自覚」とP.15「動揺」の間に挟まると思っていただけると幸いです。
※真琴は隣のクラスの女子と付き合っています。 
 まだ遙への気持ちに気付いていません。



「おやすみ。また明日ね」

小声で呟く様に言ってから、足元で散らかっていた薄いタオルケットを引っ張って、肩までかけてやった。
やっと寝付いてくれた双子の弟妹、蓮と蘭。二人とも、すーすーと気持ち良さそうに寝息を立てている。
俺は、ベッドボードに取り付けてある小さな明かりをパチンと消してから、ベッドをできるだけ揺らさない様に細心の注意を払って、
滑り落ちる様にしながらそっと布団から抜け出した。

 ―パタン

部屋の扉をそっと閉じ、俺はその隣にある自分の部屋に入った。

「はぁ〜〜」

部屋に入るなり腕を上にあげて、大きな伸びをする。

「…一日終わったぁ…」

そう言いながら、ベッドに向かってダイブすると、
勢いが良すぎたのかベッドがギッときしんで音をたてた。
厚みのある枕に顔を埋めて深呼吸する。

 ―はぁ…疲れた―…

いつもはこうしていると、自然に眠気が襲ってきて知らずのうちに寝てしまうというのがパタ―ンだ。
…けれど、今日は違った。

体はくたくたに疲れている。
…はずなのに、何故か眠れない…。眠いのに身体が無駄に火照っている様な感覚…。
…この感覚は、初めてじゃない。
中学に入った頃だったか、いや、そのちょっと前ぐらいから…俺は夜寝る前なんかに、度々この感覚に襲われる事があった。

 ―溜まってるのかな…

何がって…性欲が。

中学に入ってからの第二次成長は著しく、ぐんぐん身長は伸び、身体も大きくなって行く。
声も少しずつ低くなって、体毛も濃くなり、どんどん大人に近づいていく自分の体が、時には自分ではない様に思える事さえある。

大人になることは嫌ではない。
けれど、自分でコントロールできない自分の体や気持ちが、どうにももどかしくなる時があって、無性にイライラしてしまう。
この性欲もそうだ。
自分では何かを我慢しているつもりは微塵もないのに、唐突に身体の奥底がムズムズして、それを吐き出したくなる時がある。そんな時は、自分のアソコを弄らずにはいられないのだ。

学校の保健体育の授業で、この年代…つまりは思春期の健康な中学生男子ならマスタベ―ションするのはあたり前だから恥ずかしがらなくてもいいと言っていた。
…そんな訳ない。
自分が恥ずかしくてたまらない。本当はこんなこと、しなくてもいいのならしたくないと思っている。けれど、体はそれを許してくれない。

俺はパジャマ代わりにしているショ―トパンツを少しだけ腰からずらして、右手をそっと中に差し入れた。
ボクサ―パンツに収まった俺のアレは、既に熱を帯び始めていて膨らみ初めている。

 ―ヤバい…なぁ…

昼間の事を思い出していた。
今日は彼女とのデ―ト…いや、勉強会の日だったから、俺は彼女の家を訪れていた。

彼女の親は、不定休の自営業らしく、そのためか週末であっても両親は共に家にはおらず、つまり俺と彼女は二人きりで時間を過ごす訳だ。

彼女との初めてのキスは…少し前に済ませた。俺の彼女はどちらかと言うと積極的なタイプで、クラス活動や部活で自ら進んで行動したり発言することができる子だった。だからそんな性格も影響しているのか、最初のキスは彼女からだった。わりと突然にされたから、一方的と言えばそうとも言えるぐらいで、何の前触れもなく、勉強中に突然された様な感じだった。

 ―驚いた。

だからか、その前後の記憶は曖昧であまり覚えていない…。
ただ、彼女の唇の柔らかさや熱といった生々しい感覚だけは、無意識の中であっても本能に深く刻み込まれているらしく、それはちょっとした性的な刺激によってすぐに蘇る。

今日も俺と彼女はキスをした。

彼女とのキスを思い出しながら、唇を左手の指先で触った。自分の唇の柔らかさが、記憶の中の彼女の唇の感触を呼び起こして、やたらにエッチな気分になっていく。右手はあいかわらずパンツの中で、自分の良い場所を弄っている。息が段々と早くなっていって、額にじんわりと汗が滲むのを感じる。ふとハルの顔が頭を横切った。

 ―ハル…

ハルもこんな風に、自分を自分で慰めることがあるのだろうか…?

ハルを想像すると、急激にブワッっと全身が熱くなって、頭に血が昇るのを感じた。

 …はあぁ……

体に溜まった熱気をまるで換気する様に、深い溜息をつく。
先ほど彼女を思っていた時よりも、ずっとずっと強く興奮していて、そんな自分に驚く。
ギュッと目を閉じてみても、瞼の裏側にハルの姿がチラつく。

 …ダメだって…

自分に言い聞かせる。瞼に浮かぶハルの姿を、彼女の姿に置き換え様とすればするほど、ハルの姿が鮮明になっていく。身近な人だからこその興味が、まるで堰を切ったよう様に湧いてくる。

…ハルは…

夜な夜な布団の中で、誰にも見つからない様に息をひそめ、背徳感に苛まれながら、こんな風に自分を慰めるのだろうか。

 …どんな風に?

下衆な好奇心からの盛大な妄想が始まる。

…もう、ここまで来てしまったら、自分で自分を止めることはできない。
思春期真っ只中の体は何処までも素直だ。心も体も、とっくに自分がコントロールできる領域を外れてしまっている。

俺は自分のモノを触りながら、ハルのモノを想像する。
同じ水泳部だから、裸なんて日常的に見慣れている。細身の身体にほどよくついた胸筋、腹筋、それから、その下にあるのは…
記憶を頼りに、なんとなくの形や色を思い出す。ハルのアソコは…皮はかぶっていたような…?

 ―それを触ったらどうなる?

皮は剥けるだろうか?太さは?どれ位大きくなる?手触りは?匂いは?
…何処が…一番気持ちいいのだろうか??いく時は、声を出すのだろうか???

自分の熱く猛ったモノを上下に擦りながら、ハルの姿を想像する。

俺の想像の中にいるハルを、好き勝手に弄ぶ。
膝を左右に割る様に足を開き、両方の太ももを押さえつける様に足を抱え上げる。太もものその先には、ハルの潤んだ青い瞳が見える。ハルはあまり大きく表情は変えずに少し眉をひそめるだけで、けれど、頬は鮮やかに紅潮させて、吐く息は浅く、額から汗が流れ落ちている。

…俺は自分のモノを擦っていたが、頭の中ではハルのモノを擦っていて、
つまりは自分の快感を妄想のハルに投影させて、
ハルの快楽を自分の快楽と重ねていた。

まるで誰かに操られているかの様に、無意識に手は動く。
自分の手が自分の手ではないみたいに。上下する動きはどんどん早さを増していき、我慢のきかない先走りが先端からドクドクと漏れいって、それが潤滑油となって手の動きを更に滑らかにしていく。
クチクチと皮膚と体液が混ざる音がした。

 …気…持ちいい…気持ちいい…っ!

はぁ はぁと浅く吐き出す熱っぽい吐息がいやらしくて、自分の吐息に興奮していた。
部屋中が欲望と快楽に満ちていく様で、もう何も考えられなくって、
俺は自分の気持ちいい場所を無心に擦っていた。

 …あ…っ ハル… ハル…っ

…頭の中のハルがもういきそうと騒ぎだす。我慢できない、気持ちいい、早く出したいと泣いて懇願して、俺にしがみつく。
妄想の中のハルは、純朴で、淫乱だ―…。
胸が締め付けられる様にきゅっとなる。
急激に快楽が強くなって、一気に頂点に昇りつめる。

 あ…っ ハ…ハルぅ…っ…!!!

 い…く…っ… !!!!

込み上げる様な衝動。
身体がブルブルッと大きく震えて、慌てて脇に置いてあったティッシュを掴んで、その中に向かって、射精した。びゅるびゅると手の動きに合わせて何度かに分けて、白濁の液が放出される。ティッシュがじっとりと濡れて、横からドロッっと精液が流れてきて、慌ててティッシュを重ねた。

 …あっ…はぁ… はぁ…

暫くの間、射精の余韻に浸る様に、薄暗い部屋の天井に貼られている壁紙の模様をぼんやりと見つめていた。ぼんやりとした頭の中で、ぼんやりと考えていた。

 ―俺…何でこんな…

後悔と戸惑い。そして、自分自身への疑問…

 ―快楽に抗えなかった…から。

 …単にそれだけで?

即物的な欲求だけでここまでしてしまう自分は、どこか異常なのかしれない。
自分がハルに何を求めているのか…?
考えれば考えほどわからなくなっていく。頭の中がぐちゃぐちゃだ。

目を閉じて、俺は考えることをやめた。やめてしまった。

…ハルもまた、こんな風に誰かのことを思って眠れない夜を過ごすことがあるのだろうか?

 ―それが俺だったらいいのに…
  (そんなことあるわけないのだけれど)

ほんの少しの淡い期待は、夜の闇へと消えていく様で、どこか切ない。
こんなにも眠れない夜を、ハルは知らない。





*本編の方に、はるちゃんの一人えっちが入ってるんで、
それと対になる様に、真琴の一人えっちが書きたかったんです…!
なので満足…!

「恋せよ!男子中学生」は現在「とらのあな」様で委託中です。
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ことのつまり宣伝で恐縮です…(^_^;)
思いを詰め込んで書きました。
機会がありましたら読んでいただけますと幸いです…!




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